局所進行胸腺腫の不完全切除例をどうするか

Unradical Surgery for Locally-Advanced Thymoma: Is it time to evolve Perspectives?

Mastromarino MG et al.
Lung Cancer. Epub 2023 Apr 22.
PMID:37104878.

Abs of abs.
胸腺腫の1/3は、診断時に局所進行している。完全切除が可能な場合にのみ手術が正当化されるという指針は、これまで不動のものであった。本研究では、局所進行胸腺腫に対する不完全切除の実現可能性と有効性を、さまざま治療の組み合わせのか中で検討した。単施設での胸腺腫データを用いて、後ろ向き解析を行った。1995年から2019年の間にⅢ期およびIVa期の胸腺腫の手術を受けた連続285人で検討した。治癒切除を狙ったが不完全切除となった(腫瘍負担の少なくとも90%を除去)患者を対象とした。長期予後と、癌に注目した生存期間(CSS)および無増悪生存期間(PFS)の予測因子を解析した。術後補助療法の有効性も副次評価項目とした。本研究には79人の患者が含まれ、60人が顕微鏡的に腫瘍残存が見られ(76%、R1)、19人が肉眼的に腫瘍残存していた(24%、R2)。正岡-古賀病期はⅢ期が41人(52%)、IVa期が38人(48%)であった。組織型はB2-thymomas(n=31、39.2%)が多く、続いてB3(n=27、34.2%)であった。5年および10年のCSSは88%と80%であった。70人(90%)に術後補助療法が行われていた。それらは根治切除と同等のCSSを示していた(5年:89.1% vs 98.9%、10年:81.8% vs 92.7%、p=0.43)。残存病変の部位、正岡-古賀病期分類、WHO組織型は予後に影響を与えなかった。ステップワイズ多変量解析により、術後補助化学療法がCSS予後良好因子であることが確認された(ハザード比0.51[0.33-0.79], p=0.003).サブグループでは術後化学(放射線)療法(pCRT)を受けたR2患者の予後は、放射線療法のみを受けたR2患者よりも有意に良好であった(10年CSS:60%、p<0.001)。局所進行胸腺腫において、WHO組織型、正岡-古賀病期分類、残存病変の部位によらず、根治手術が不可能であっても、不完全切除がさまざまな治療との組み合わせで有効であることが証明された。

感想
胸腺腫において不完全切除に終わっても抗がん剤を行うことで良好な予後が期待できるというデータです。肺癌において画像では取れそうでも、手術してみると完全切除できずに一部取り残してしまったという症例はたまに遭遇します。肺癌と違って胸腺腫自体が縦隔発生ですのでどうしても心膜、大血管浸潤が多くなるのは仕方ないところです。今回の報告で一番大切だと思うのはTable2で、それによるとR1(顕微鏡的遺残)では術後補助療法としての放射線だけであってもそれほど10年生存には影響しませんが、R2(肉眼的遺残)では大きく変わるということです。R2の場合、放射線だけでは10年生存が0%であるのに対して、抗がん剤が加わると60%と大きく異なります。ただし症例数が少ないことには注意が必要です。術後療法としてはシスプラチンとドキソルビシンが使用されており、概ね現在の方針と合致しています。今回のデータだけでは、最初から明らかに取り切れないものに対しては結論が出ませんが、少なくとも取れそうで取れなかった胸腺腫に対しては術後の抗がん剤を積極的に検討すべきあることを示しています。