小細胞肺癌の脳転移に定位放射線療法は適切か

Radiosurgery alone is associated with favorable outcomes for brain metastases from small-cell lung cancer

Tyler P et al
Lung Cancer.Epub 2018 Apr 2.
PMID:

Abs of abs.
全脳照射(WBRT)は、小細胞肺癌(SCLC)の脳転移(BM)の標準治療であるが、WBRTの神経認知毒性がよく知られている。定位放射線療法(SRS)が、SCLC以外の組織型において選択されるが、SCLCにおいては、このアプローチに関するデータがほとんどない。今回は診断時にBMを有するSCLC患者のデータベースを検索し、まずSRSを行った患者とWBRT±SRSと層別化し比較した。Cox回帰および傾向スコアを利用して、各アプローチの全生存期間(OS)への影響を検討した。2010年から2014年までに5952人の適格例(WBRT5752、SRS200)が確認され、追跡期間中央値は40.0ヶ月であった。SRS先行は、全生存期間が長かった(10.8対7.1ヶ月、ハザード比0.65[0.55-0.75]。p<0.001)。これは多変量解析において、合併症、頭蓋外転移、年齢、人種/民族、性別を調整してもなお保持されていた(ハザード比0.70[0.60-0.81]、p<0.001)。これらの結果は、傾向スコア分析においても確認された。また詳細にデータを入手できたものに関して、SRSだけのものとSRS + WBRTの結果を比較したサブセット解析では全生存期間に差はなかった(p=0.601)。
今回の結果は、知る限りSCLC単独でSRSが行われた最大のデータセットである。ここでSRS単独の良好なOS結果は、SCLC患者の一部にはSRSが適切であることを示唆している。今後は前向き研究で確認する必要がある。

感想
小細胞肺癌における無症状の単発~数個の脳転移は、時々実地臨床で遭遇する問題です。小細胞肺癌では全身疾患ととらえ、個数が少なくとも、正常な部分への予防効果も考え、全脳照射が選択されることが多いでしょう。しかしガンマナイフなどの局所療法では本当にダメなのか、議論の余地があるところと思います。進展型小細胞肺癌での予防的全脳照射の結果がよくなかった[Takahashi T LancetOncol2017 PMID:28343976]ことも、不要な部分への照射を避ける根拠になるでしょう。肺癌学会ガイドラインにはこのあたりへの言及はありません。
SRSを先行といっても、初発時にあった場合は無症状であれば、まず抗がん剤を優先するケースが多いでしょうし、もしそれで消えてしまうとSRSは難しくなります。また限局型であれば予防的全脳照射が標準治療ですので、実際に迷う症例はそもそも進展型であったものが、初回治療後に少数の脳転移が残存しているケースか、進展型の経過観察中に少数個の脳転移が出現したケースになるかと思います。後者ではSRSの選択の余地があるかと思いますが、前者では単発であったとしても全脳照射を選択するかと思います。いずれにしてもSRSが全くダメなわけではなく、今回の報告から症例によっては選択できる可能性があることが示された意義はありそうです。ただ私は著者の主張の前向き研究として行うほどではないような気がしています。