Let us not underestimate the long-term risk of SPLC after surgical resection of NSCLC.
Leroy T et al.
Lung Cancer. 2019 Nov;137:23-30.
PMID: 31521979
Abs of abs.
非小細胞肺癌で手術を受けた患者において、2次性の原発性肺癌(SPLC)の危険が高くなっていることが報告されている。しかしこれに関してはさまざまなリスク因子が想定され、再発あるいは合併症があるため死亡リスクが高まることを考慮に入れた研究はあまりない。その後の年余にわたるリスク評価は術後の経過観察計画に確実に影響を及ぼすと考えられる。今回の研究は長期間におけるSPLCのリスクを競合リスクを加味した上で評価することである。フランスの2施設で、2002-2015の間にⅠ-Ⅲ期の非小細胞肺癌で完全切除した症例を対象にSPLCの累積リスクを推定した。部分分布に対する比例ハザードモデルを用いて競合リスクの下でのSPLCのリスクについて分析した。対象となった522人のうち腺癌は52.3%、ⅠまたはⅡ期75.7%を占めていた。SPLCは84人(16.1%)に見られた。術後10年間での累積リスクは20.2%、14年間では25.2%となった。多変量解析ではSPLCは有意に術後の胸部放射線治療で高くなっていた(ハザード比2.79[1.41-5.52]; P=0.003)本研究は非小細胞肺癌の切除後に競合リスクを加味した統計モデルを使用し行われた。SPLCの累積発生率は術後胸部照射が高リスクであった。この結果から、SPLCのスクリーニングのために術後長期経過観察が必要であると考えられる。
感想
2回目の原発性肺癌のリスク推定は難しい問題を含んでいます。2回目が出てくるまでの間に再発で死亡すれば、観察されることのないイベントとなるからです。この再発死亡を打ち切りとして累積再発率をそのまま推定すると、関心あるイベントの発生を過小評価してしまいます。技術的にその問題点をクリアするために競合リスクを考慮した解析を行います。競合リスクに関してはICR臨床研究入門にも解説があります。詳細は割愛しますが、Rではsurvivalパッケージでのイベントを3つ設けることで実施可能です。
手術データは国ごとに大きく異なりますが、今回の術後10年間での累積リスクは20.2%、14年間では25.2%と無視できない数字です。また年毎の推定も行われており、術後4年、5年が最も高くなっています。原発と再発との鑑別は難しいですが、これを内科治療に外挿すると、小細胞肺癌または非小細胞肺癌での抗がん剤+化学療法では完治したと思っても長期フォローアップが必要とも考えられます。Fig4を見ると、手術、手術+抗がん剤、手術+放射線(+抗がん剤)後の累積発症率が示されており、放射線が含まれるものが最もSPLCの発症率が高くなっています。
さて肺癌学会ガイドラインでは、術後の経過観察について「明確に推奨する根拠はないものの術後経過観察は日常診療としてなされ,患者のニーズが明確に存在する」とし、少し弱気な印象ではあるものの「外科切除後の非小細胞肺癌に対しては定期的な経過観察を行うよう推奨する」としています。一見当たり前のように思いながらも、術後の経過観察については思ったほどエビデンスがないようです。興味深いところなので、当該箇所の「CQ19.外科切除後の非小細胞肺癌に対しては,定期的な経過観察を行うべきか?」は一読をお勧めします。内科の立場としては、完治と思える状態でも意外に2次癌の危険性は高いという認識でフォローアップに注意していくということかと思います。