MET14skippingのテポチニブ治療は背景に依存するか

Tepotinib Efficacy and Safety in Patients with MET Exon 14 Skipping NSCLC: Outcomes in Patient Subgroups from the VISION Study with Relevance for Clinical Practice.

Le X et al.
Clin Cancer Res. 2021 Nov 17.Epub ahead of print.
PMID:34789481.

Abs of abs.
VISION試験の主解析では、テポチニブがMETエクソン14(METex14)スキッピングの非小細胞肺癌(NSCLC)において長期的な臨床活性を有することが示された。今回はサブグループについてアップデートを行った。今回の試験は、METex14スキッピングNSCLCに対するテポチニブ500mgの第Ⅱ相非盲検マルチコホート試験である。事前規定された年齢、前治療(化学療法、免疫チェックポイント阻害剤)、脳転移のサブグループにおける有効性と安全性を評価した。また、脳転移判定基準:RANO-BM(Response Assessment in Neuro-Oncology Brain Metastases)を用いた事後解析により、頭蓋内効果を評価した。152例の評価可能例(年齢中央値73.1歳)について、奏効率(ORR)は44.7%[36.7-53.0]であった。75歳未満(84例)および75歳以上(68例)の奏効率はそれぞれ48.8%[37.7-60.0]、39.7%[28.0-52.3]であった。前治療歴のある患者(83例)と前治療歴のない患者(69例)を比較しても同じような有効性を示した[奏効率:44.9% vs 44.6%、奏効期間中央値10.8ヶ月 vs 11.1ヶ月]。RANO-BMで解析した15例(12例は放射線治療歴あり)のうち、13例が頭蓋内の病勢コントロールが得られた。測定可能な脳転移を有する患者7例のうち5例が頭蓋内で部分奏効を示した。安全性評価が可能な255例の患者のうち、64例(25.1%)にグレード3以上の治療関連有害事象が見られ、27例(10.6%)が治療中断した。有害事象の発生率は、前治療の有無に関係がなかった。本解析から、テポチニブは、年齢、前治療、脳転移の有無によるサブグループをまたがってで有効であり、一方で管理可能な安全性プロファイルと少数の治療中止が見られていた。

感想
METスキッピングに対するテポチニブの試験はVISION試験[Paik PK NEJM2020 PMID:32469185]と日本人サブセットに対する報告[Sakai H JJCO2021 PMID:34037224]が参考となるところです。今回はVISION試験の後解析で、前治療や脳転移、年齢では効果に大きな差がないことを報告しています。気になるのはICIとの前後関係ですが、これも大きな差がないとしています。ただ症例数はコンボ例も含め30例程度ですのでまだ変わる可能性があります。
そもそもMETスキッピングに対してICIは有効なのでしょうか。過去の報告[Sabari JK AnnOncol2018 PMID: 30165371]では、PD-L1発現はやや多い(TPS>=50%が44%)ものの、TMBが低くICIが奏効する例もあるが中程度の反応性であるとされています。つまりどこかで一度は試してみたいが、過剰な期待もできないということになります。遺伝子パネル検査やマルチプレックスPCRなど多数の検査が一度に行えるようになりつつありますが、いわゆるTATが長くなることも気持ちの良いものではありません。その点、METスキッピングについては初回治療開始後でも大きな影響を受けなさそうであり、少し安心できます。