Immunogenomic profiling of lung adenocarcinoma reveals poorly differentiated tumors are associated with an immunogenic tumor microenvironment.
Akhave N et al.
Lung Cancer. 2022 Oct;172:19-28.
PMID:35973335.
Abs of abs.
病理医は肺腺癌に対し、明らかに異なる増殖形式があることを常に見ており、予後と関連があることが示唆されている。今回はIASLCの最新のグレーディングシステムで定義された増殖形式と腫瘍の免疫微小環境の違いとの関係を調べ、免疫療法への反応性を考察した。174例のⅠ~Ⅲ期肺腺癌を組織形態(solid, micropapillary, acinar, papillary,lepidic)により分類し、高分化、中分化、低分化にグループ分けを行った。全エクソームシーケンス、遺伝子発現プロファイル、免疫染色、CIBERSORT、T細胞受容体シーケンスなどの包括的なプラットフォーム解析を実施し、ドライバー変異、免疫細胞浸潤、生存率について各グループを比較した。また病理学的病期と喫煙で調整した多変量解析を行った。低分化型腫瘍は、中分化型や高分化型腫瘍と違って喫煙との強い関連性を示した。過去の報告とは異なり、低分化型腫瘍は根治切除後の生存率の低下とは関連しなかった。遺伝子解析を行うと、低分化型腫瘍は高いTMBと関連するものの、ドライバー変異との関連は見られなかった。免疫学的解析では、低分化型腫瘍はT細胞クローナリティの増加、PD-L1発現、細胞障害性CD8+T細胞、活性化CD4+T細胞、炎症促進性(M1)マクロファージによる浸潤と関連していることが分かった。病期と喫煙で調整した多変量解析により、IASLCグレード間の免疫環境の違いは独立していることが確認された。最新のIASLC分類で定義されるように、低分化型腫瘍は、免疫治療に対する効果を予測する腫瘍微小環境と関連しており、このことは特に若いステージの肺腺癌における免疫療法の臨床試験デザインに含めるべきであろう。
感想
非常に詳細かつ包括的な研究です。ハイライトにあるように重要な点は低分化腺癌は免疫療法が奏功しやすい微小環境にある、ということです。ただし完全切除例での話です。IASLCの腺癌組織分類は予後を層別化できますが、あくまでも切除した症例に対してであり、旧ブログでも言及した通りこれを進行例に外挿することができるかどうかは結論が出ていません。結論の主張通り、「術前」かつ「免疫療法」を議論する場合は確かに腺癌のサブタイプを考慮すべきであろうことは納得できます。
話は違いますが、この理屈で術後の免疫療法の一貫しないデータを説明することができるかも知れません。つまり遠隔転移を起こす前と、起こした後ではまったく免疫環境が変わっている、もしくは免疫環境が変わったために全身転移を起こしていると考えることができるかも知れないということです。
今回の論文を取り上げたのはデータが豊富で、免疫療法に伴う微小環境を議論する上で使えそうだ小ネタが多く載っているからです。