Covid-19, mRNAワクチンの効果

Safety and Efficacy of the BNT162b2 mRNA Covid-19 Vaccine.

Polack FP et al.
N Engl J Med. 2020 Dec 31;383(27):2603-2615.
PMID:33301246

Abs of abs.
SARS-CoV-2感染およびその結果として発生した新型コロナウイルス感染症(Covid-19)は、世界的大流行により数千万人を苦しめている。安全で効果的なワクチンが早急に必要とされている。現在進行中で国際共同プラセボ対照、医療者盲検の有効性評価試験を行っている。今回は16歳以上を1:1の割合で無作為に割り付け、プラセボまたはBNT162b2ワクチン(1回あたり30μg)を21日間隔で2回投与した。BNT162b2は、脂質ナノ粒子で包まれた核酸修飾RNAワクチンで、安定化された膜固定型のSARS-CoV-2完全型スパイクタンパクをコードしている。主要評価項目は、検査で確認できたCovid-19に対するワクチンの有効性と安全性であった。43548人の参加者が無作為化され、そのうち43448人が投与を受けた。BNT162b2を投与されたのは21720人、プラセボは21728人であった。2回目の投与から少なくとも7日以降に発症したCovid-19は、BNT162b2投与群では8例、プラセボ投与群では162例であった。つまりBNT162b2はCovid-19の予防として95%[90.3-97.6]の有効性を示した。年齢、性別、人種、民族、ベースラインのBMI、併存疾患の有無による亜集団においても、同様の効果であった。初回投与後に発症したCovid-19重症例10例のうち、9例はプラセボに、1例はBNT162b2で発生していた。BNT162b2の安全性は、短期間の軽度から中等度の注射部位の痛み、倦怠感、頭痛であった。重篤な有害事象の発生率は低く、ワクチン群とプラセボ群で同程度であった。今回の検討から、BNT162b2の2回投与は、16歳以上でCovid-19に対する95%の保護効果を示した。中央値2ヶ月間であるが、安全性は他のウイルスワクチンと同様であった。

感想
ファイザー社のRNAワクチンの結果です。気になる有害事象ですが、ワクチン群21%、プラセボ群12%に報告されました。0.3%にリンパ節腫脹が見られています。局所の痛みなどを除くと、重篤なものはワクチン接種と関連した肩の傷害、右腋窩リンパ節腫脹、不整脈、足の麻痺でした。死亡はワクチン2例に対し、プラセボは4例でした。Fig3に累積発症率が示されていますが、どう見ても効果は絶大です。投与開始2週ころまでは発症が同等ですが、その後ワクチン群ではほとんど発症が見られません。同日付でモデルナのmRNAワクチンの結果も掲載されています。こちらも同じくらいの予防効果でどちらが良いかは全く分かりません。両者とも長期間経った後の有害事象がないかどうか、どれくらいの間隔で接種する必要があるかはこれからの課題です。またワクチンが発症や重症化を抑えるだけでなく、感染も予防できるのかは公衆衛生上も重要な課題です。
2021年2月から医療従事者に対する接種が始まります。健康体に長期観察結果のないものを入れる不安がないわけではありませんが、この1年のCovid-19の惨状を見ますと打たない選択はないと思います。大した判断材料のないのに「最終的には自分で決めて」と言うのもどうかと思います。思いのほか接種を希望しない人が多いとの報道もありますが、2つの論文を読む限り利益が大きく上回るように思います。ワクチンが始まると、因果関係に関係なく体調悪化した人を取り上げる報道合戦が始まることを懸念しています。特に長期で予想外の有害事象が起こる可能性は否定しませんが、今回の母集団は接種群だけで2万人のデータですから短期の有害事象については、ほとんど心配ないと思います。