毒性中止したICIの再投与は適切か

Immune Checkpoint Inhibitor Rechallenge Safety and Efficacy in Stage IV Non-Small Cell Lung Cancer Patients After Immune-Related Adverse Events.

Guo M et al.
Clin Lung Cancer. 2022 Dec;23(8):686-693.
PMID:36050243.

Abs of abs.
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)は、抗腫瘍効果と多彩な免疫関連有害事象(irAE)を引きおこす。グレード2以上のirAEはICI中止が必要とされる。このためICI治療の再開は、時としてチャレンジングである。2015年1月から2020年12月までに単施設でICIを受けたIV期非小細胞肺癌1051例を後ろ向き解析し、治療中断が必要とされるグレード2以上のirAEを認めた99例(9.4%)を同定した。うち40例が再治療を受け(リチャレンジ群)、59名が治療を中止していた(治療中断群)。2群の患者背景は類似していた。リチャレンジ群での初発のirAEは軽度であった。リチャレンジ後、40例中24例(60%)に同一または新規のirAEが発生していた。20例(50%)にグレード2以上のirAEが再度発生していた。リチャレンジ後、グレード4のirAEやirAEに関連する死亡はなかった。多変量解析では、全生存期間(ハザード比1.10[0.57-2.15]、P=0.77)、無増悪生存期間(ハザード比0.87[0.45-1.71]、P=0.69)に2群間の差は認められず、最初の副作用前の奏効だけがOSとPFSに影響を与える因子となっていた。本検討からリチャレンジした場合、グレード2以上のirAEのリスクは相対的に高くなる。初発のirAEが改善している場合のリスクは低いようである。ICIのリチャレンジをしたかどうかでの生存アウトカムの差は見られなかった。グレード2以上のirAE、特に重度のirAEが発生した場合、ICIの永久的な中止は治療戦略として適切である。

感想
単施設でのデータですが臨床的には非常に有用なデータです。非常に重篤なirAEが起こるケースはICIがよく効いている場合が多く、ICIを一旦中止するのが普通です。しかし時間が経って再増大してきた場合に再投与の誘惑にかられます。ガイドライン上はグレード3で中止になることが多いですが、他に選択肢が少なく再投与を考えることもしばしばあります。再投与の目指すところはOSの延長ですので、これが得られない場合、無理して再投与を考えなくても良くなります。リチャレンジした人が最初に経験したirAEは肺臓炎、大腸炎、皮膚炎、肝炎の順です。リチャレンジ後のirAEも同じような傾向ですが大腸炎、皮膚炎、肝炎、肺臓炎の順になり16例(66.7%)の患者が同じ irAEの再発を経験し、8例(33.3%)が新規irAEとなっています。同じグレードでも脳炎や重症筋無力症ではおそらく再投与しないでしょう。この4つはグレード2以上でも比較的対応しやすいという面もあります。
さて2群比較ですが、今回のPFS、OSは最初のICI開始から病勢進行または死亡までの時間として定義されています。irAEが起こるほどICIはよく効くので、素で比べればPFSとOSはリチャレンジ群が良くなります。事実Fig2のPFSとOSはそのようになっています。今回の主題はリチャレンジでどうなるか?なので、一回目のICIで奏効しているかどうかを因子に含め、PFS、OSの多変量解析をしています。99例に対して11個もの因子を入れモデルとしてのロバスト性に不安があるものの、リチャレンジのOSに対する有意性は確認できませんでした。そもそもそのまま比較したOSで曲線は上を行っているものの、P=0.29なので厳しいです。再投与できたというバイアスも含めると、ここまでの解析をせずとも、再投与にあまり利益がないことが推察されます。