2次治療以降でのオシメルチニブの肺臓炎リスク因子

Real-world evaluation of factors for interstitial lung disease incidence and radiologic characteristics in patients with epidermal growth factor receptor T790M-positive non-small cell lung cancer treated with osimertinib in Japan.

Gemma A et al.
J Thorac Oncol. 2020 Sep 11:S1556-0864(20)30717-6.
PMID:32927121.

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する2次治療またはそれ以降の治療におけるオシメルチニブでの間質性肺疾患(ILD)発症の特徴を、日本での市販後データで検討した。ILDについてはレトロスペクティブに画像評価も行った。主治医から有害事象として報告されたILD症例と、専門委員会の判断で ILDとされた患者を研究対象とした。3578例中、主治医から報告されたのは252例、245人(6.8%)であった。オシメルチニブ開始後発症までの期間中央値は63.0日(5~410日)であり、29例の致死例が報告された。専門委員会は 231/3578例(6.5%)をILDありと評価した。ILD発症と関連する因子として、ニボルマブ治療歴(調整オッズ比:2.84[1.98~4.07]およびILDの既往・合併(3.51[2.10~5.87])が同定された。ニボルマブ治療歴のうち、オシメルチニブを開始する前の1ヶ月以内にニボルマブ治療を中止していた場合、ILDを発症する割合が最も多く、ニボルマブ終了からオシメルチニブ開始までの期間が長くなるにつれて、発症率と割合が減少していく傾向が見られた。ILDの発生頻度は、日本人集団における既知のオシメルチニブの安全性プロファイルと一致していた。ILDの既往/合併およびニボルマブ治療歴は、オシメルチニブによるILD発症と関連する可能性がある。

感想
2次治療以降で使われたT790M陽性症例に対するオシメルチニブの肺臓炎リスク評価の論文となります。通常の多変量解析として25項目を行い、感度分析を考慮しリスク因子を保守的に結論を下しています。候補となったのは補遺1にあり、年齢(65歳以上)、入院、ニボルマブ使用、酸素投与、ILD既往合併、心疾患既往合併、心嚢液でした。そのうち調整オッズ比が2以上のものを因子として同定し、最終的にニボルマブ治療歴とILDの既往・合併を結論としています。これらは多くの因子を取り扱う上で、むしろ控えめな結論で信頼できるものと考えてよいでしょう。画像パターンについても解析されており、DADが10%程度で、残りは器質化肺炎パターンとFaint infiltration pattarnで分け合う状態でした。典型画像も示されているので一度確認しておくと診療の参考になります。すでに報告されていますが、ニボルマブ中止とオシメルチニブ開始が近いと肺障害が起こりやすく、おおむね半年あけば追加リスクはなくなるように見えます。
さて問題は、今回は別のTKIを使用後、T790M陽性例に限ったデータであり、現在はその状態で使われる患者さんはむしろ少なくなっているということです。1次治療のオシメルチニブでの肺臓炎の発症率が高いことはすでに知られています。致命的な例は少ないものの私の施設でも頻発しており、大規模研究によりリスクが同定されることを期待しています。あくまでも個人的な印象ですが、非喫煙者、既存の肺に全く問題ない人にも多く出ており、免疫治療と相性が悪い点からもこれまでの第1,2世代のTKIと明らかに違う機序で起こっていると考えています。