PS不良例に対するオシメルチニブ

Thoracic Oncology Research Group (TORG). A Prospective Phase II Trial of First-Line Osimertinib for Patients With EGFR Mutation-Positive NSCLC and Poor Performance Status (OPEN/TORG2040).

Fukui T et al,
J Thorac Oncol. 2025 May;20(5):665-675.
PMID:39755169.

Abs of abs,
オシメルチニブは、PS良好なEGFR遺伝子変異陽性患者に対する初回治療薬である。オシメルチニブに関するデータが蓄積されているが、PS不良におけるエビデンスは少ない。今回はEGFR遺伝子変異陽性PS不良患者におけるオシメルチニブ初回治療の有効性と安全性を評価するため、多施設共同第Ⅱ相試験(OPEN/TORG2040)を行った。EGFR感受性変異を有し、PSが2~4の未治療患者を登録した。適格患者には、オシメルチニブ(80mg、1日1回)が経口投与された。 主要評価項目は奏効率であった。副次項目として、病勢制御率、PS改善率、患者申告のアウトカム、安全性であった。2021年2月から2022年2月に30人(PS2が22人、PS3が6人、PS4が2人)が登録された。 年齢中央値は75歳(41~92)で、脳転移ありが18人であった。奏効率は63.3%(90%CI[46.7%-77.9%];片側p=0.033)であった。 病勢制御率は93.3%、PS改善率は63.3%であった。健康関連指標も改善した。無増悪生存期間中央値は8.0ヵ月、生存期間中央値は25.4ヵ月であった。 8例(26.7%)に投与中止に至る重篤な有害事象がおこり、6例(20.0%)に間質性肺疾患が発生した今回の前向き研究で、EGFR遺伝子変異陽性でPS不良患者におけるオシメルチニブ初回治療の有効性を確認した。間質性肺疾患のリスク管理の必要性が求められる。

感想
従来の化学療法の概念を覆したのは、PS不良の患者に対するゲフィチニブの使用でした[Inoue A JCO2009 PMID:19224850]。この試験は甦る死者に例えて「Lazarus response」と呼ばれるほど影響力が大きかったです。このゲフィチニブの試験では、重度の肺炎(G4)が1名(3%)で記録されていますが、一般的にはゲフィチニブによる肺炎の発生率は約5%ですので、肺炎の発症が特に多いとは考えられていなかったと思います。
PS不良の患者に対してゲフィチニブが許容できるのであれば、さらに毒性の少ないオシメルチニブを使う臨床試験は必要ないと昔は思っていました。今回、奏効率は63%(46.7%-77.9%)で、45%を上回っているため、ポジティブなデータと見なされます。問題となる肺炎は、G1が2例、G2が1例、G3が2例、G5が1例で、全てのグレードでは6例(20%)と少数の研究のため、割合としてはかなり高く見えるかもしれません。しかしG5はわずか1例で、G4はありませんので、全体的には軽症であったことは幸いです。ただし、毒性による治療中止が27%あったことは、判断が難しい点です。
日常臨床では、PS不良の患者にオシメルチニブがすでに使用されています。特に脳転移や髄膜炎に伴いPSが不良となった患者には、有望な選択肢です。総じて言えば、ガイドラインに記載されているように、ゲフィチニブもまだ有効な選択肢だと考えられます。しかし、TKIは他にも選択肢があり、用量調整も可能ですので、「強く推奨」するかどうかは意見が分かれるところだと思います。