リンパ球・好中球比はPD-1阻害薬のアウトカムと関連する

Correlation of Neutrophil to Lymphocyte Ratio and Absolute Neutrophil Count With Outcomes With PD-1 Axis Inhibitors in Patients With Advanced Non-Small-Cell Lung Cancer.

Zer A et al.
Clin Lung Cancer. 2018 May 8. pii: S1525-7304(18)30090-1.
PMID: 29803574

Abs of abs.
PD-1阻害薬は、進行非小細胞肺癌に対する標準治療となっている。最終的に治療の恩恵を受ける患者であっても、反応が遅かったりpseudoprogressionが起こることがある。患者選択、奏効予測、および治療決定を支援するために、PD-L1発現を超えた新しいマーカーが必要である。好中球・リンパ球比 [NLR]、好中球絶対数 [ANC]、および血小板・リンパ球比 [PLR] と、前向きに収集された臨床アウトカム(奏効率、病勢制御率[DCR]、治療期間、全生存)との関連を検討した、対象は2013年5月から2016年8月に進行非小細胞肺癌患者でPD-1阻害剤で治療されたものを後ろ向き解析された。ベースライン時および治療中(2週または3週後および8週後)の血液検査値が含まれた。PD-1阻害剤で治療された88 人の患者のうち、22人(25%)が部分奏効を示した。ベースラインでのNLR≦4は、優れたDCR(74%対50%; P=0.025)、治療期間(P=0.037)、進行までの時間(P=0.053)および全生存期間(P=0.019)と関連した。PD-L1発現との関連は見られなかった。治療中のNLRおよびANCの低下もまた、奏効率(それぞれP=0.025およびP=0.017)および治療期間(P=0.036およびP=0.008)と関連していた。ベースラインのPLRとDCR、奏効、治療期間、全生存期間との間に関連は見られなかった。治療中のベースラインNLRが4以下であること、NLRおよびANCが低いことは、病勢制御および治療反応性と相関する可能性がある。これらのことは大規模研究にて治療利益の潜在的な予測因子となりうるかどうか検討すべきである。

感想
原因はよくわかっていませんが、NLRが高いと予後不良です。治療前のNLRと予後との関連を研究した論文は多数存在します。問題となるカットオフ値は2.5-5と幅があり、非小細胞肺癌でのメタアナリシスも存在します[Gu XBSci Rep2015 PMID:26205001]。その報告によれば、カットオフ値は5が妥当で、高いと予後不良であることに再現性があります。今回のカットオフ値は固形腫瘍全体でのメタアナリシス[Templeton AJ JNCI2014 PMID:24875653]の値を採用しています。といっても強い根拠があるわけでなく、その報告で採用された研究で採用していたカットオフの中央値が4であったことに由来しているだけです。この値で2群に分けた場合、NLR>4のグループにはやや腺癌が多く扁平上皮癌が少ない傾向が見られました。治療前NLR値と奏効の関係では、NLR>4でPDが50%、8週後にNLR=<4であれば約3/4でSD以上が得られていました。その時々の数値としてのNLRだけであっても、効果との何らかの相関は見て取れます。今回の研究の肝はFig3で、治療前のNLRは似たようなものであっても、SDあるいはPDの場合8週後までにNLRが上昇し、逆にPRの場合NLRが下がっていくというところにあります。NLRの取る値の上下の幅を見ますと、4週後でもほぼ傾向はつかめそうですが、8週だと確実になってくるように見えます。PRの場合8週後のNLR低下は平均1.5、SD、PDの場合の上昇は平均2.4でした。また4週後、8週後の好中球数が低下してくるかどうかは治療期間と関連していました。これを臨床応用するならば、NLRが低下してくるかどうかを見た上で、さらに好中球数の低下にも注意を払っていくことが大切になります。以前のiRECISTでの評価[Seymour Lancet Oncol2017 PMID:28271869]では6-12週毎の評価が推奨されていました。今回の結果と合わせて考えると、8週後の画像評価に合わせて”hemotologic response”(注:完全に私の造語です)も評価対象にすべきかもしれません。
前にも述べたかもしれませんが、私は免疫治療の効果予測因子としてのNLR低下を非常に高く評価しています。厳密には投与前にわかるわけではないので、効果予測因子ではないのかも知れません。しかし追加の費用、検体が要らず、どこでもできること、さらに後ろ向きにすぐ確認できることは大きな強みです。自前のデータでも確認しましたが例外が少なく安定していました。確立させるためには、大規模前向き試験のデータできちんとカットオフ値を決める必要があるかもしれません。実臨床のデータを見る限り4か5の差はあまりなく、NLRが低下するという現象が治療アウトカム予測としてかなり有望と思います。