Uncommon mutationの治療開始は第1世代TKIか殺細胞性抗がん剤か

Efficacy and long-term survival of advanced lung adenocarcinoma patients with uncommon EGFR mutations treated with 1st generation EGFR-TKIs compared with chemotherapy as first-line therapy.

Li H et al.
Lung Cancer. 2019 Apr;130:42-49.
PMID:30885350

Abs of abs.
本研究では、uncommonEGFR遺伝子変異を有する進行肺腺癌患者における、初回治療としての第一世代EGFR-TKIとプラチナ製剤の化学療法の効果と長期生存について解析した。4276人の進行肺癌(ⅢB/IV期)で、腺癌かつEGFR遺伝子変異を測定された患者を対象とした。UncommonのEGFR遺伝子変異患者について、臨床背景、生存データ、治療転帰および初回治療後の治療について収集した。結果はcommonEGFR遺伝子変異の患者と比較した。UncommonEGFR遺伝子変異の患者について、EGFR-TKIとプラチナベースの化学療法を比較したところ、奏効率(33% vs 27.1% P=0.499)および病勢制御率(76.5% vs 87.5%, P=0.194)に差は見られなかった。EGFR-TKIは化学療法よりも優れた無増悪生存期間を示した(7.2 vs 4.9ヶ月, ハザード比0.604; P=0.0088)。興味深いことに、化学療法と比較して、EGFR-TKIでは全生存期間(14.3 vs 20.7ヶ月、ハザード比=1.759、P=0.0336)が有意に悪かった。多変量解析では。肺外転移(ハザード比=2.240、P=0.001)および喫煙歴(ハザード比=2.048、P=0.013)が、uncommonEGFR遺伝子変異の患者における全生存期間の独立した予後因子であった。UncommonEGFR遺伝子変異の患者に対して、化学療法と比較して第1世代EGFR-TKIを初回治療で使用した場合、短期効果の改善が期待できる。しかしプラチナベースの化学療法の方が生存期間を延長していた。

感想
Uncommon変異に対するエビデンスとしては、昨年TKIナイーブ症例の初回治療としてオシメルチニブを投与する第Ⅱ相試験が36例を対象に行われ、奏効率50%、PFSが9.5ヶ月と報告されています[MJ Ahn ASCO2018 #9050 NCT03424759]。その他はLuxlung試験の統合解析のデータ[Yang JC LancetOncol2015 PMID:26051236]が有名で、過去には旧ブログでも取り上げています。この試験は第2世代のアファチニブが対象でしたが、殺細胞性抗がん剤で治療開始した方が、全生存期間が長いことが観察されました。第1世代のTKIでの検討例としては、62例でのの報告[Wu JY ClinCancerRes2011 PMID:21531810]があり、全体で奏効率48.4%、PFS5ヶ月でした。またNEJ002試験では、わずかながらuncommon登録が許容されており、そのサブセット解析[Watanabe S JTO2014 PMID:24419415]では、 割り付けられたG719X7例とL861Q 3例について報告されています。各5例がCBDCA+PAC群とゲフィチニブ群で治療を受けており、ゲフィチニブ群でのuncommon mutationのPFSは明らかに悪く、抗がん剤群ではその傾向は見られませんでした。今回の結果もこれらを補足するもので、初回治療をEGFR-TKIで始めると、抗がん剤に比べて全生存期間が有意に悪かったというものでした。今回のデータでは初回TKIで進行後の2次治療として、19.6%がプラチナベースの抗がん剤を受け、6%が抗がん剤+分子標的治療を受けていました。全生存期間が悪いのはここに原因があると考えるのが自然と思います。つまりTKIで始めた場合、十分な抗がん剤が入らなくなることに尽きます。しかし無作為化試験と違い、TKIで始めた人の中には合併症などでどうしても殺細胞性抗がん剤ができない人が含まれます。EGFR-TKIで開始した人の2次治療としてのTKIのPFSは3.4ヶ月、プラチナベースのPFSは2.6ヶ月と書かれています。一方抗がん剤で開始した人は、2次治療として52%がTKI単剤の投与を受け、そのPFSは3.5ヶ月と報告されています。従来から同じTKIナイーブでも1次治療で行うより2次治療で行った方がPFSが短くなることは既知ですので、目立って効果が落ちてくるわけではないと思います。Uncommon変異は数が少ないですが、治療シークエンスを考える上ではよい材料です。前述の旧ブログでも書きましたが、シークエンスとしてPFSが優っている治療を前にする組み立ての方が本来良い、少なくとも負けないはずですが、肝心の治療そのものが入らなければ何にもなりません。オシメルチニブの登場でuncommon症例への考え方はますます混乱していますが、現在のところ抗がん剤中心に考えた方が堅実なように思われます。