ニボルマブの4年生存率

Four-year survival with nivolumab in patients with previously treated advanced non-small-cell lung cancer: a pooled analysis.

Antonia SJ et al.
Lancet Oncol. 2019 Aug 14. [Epub ahead of print]
PMID: 31422028

Abs of abs.
前治療歴のある進行非小細胞肺癌を対象にした第Ⅲ相試験においてニボルマブはドセタキセルに比べて高い奏効率、長期奏効、生命予後延長を示している。今回の目的はニボルマブの長期効果と奏効例あるいは病勢制御例における生存に与える影響について解析することにある。CheckMate 017、057、063、003試験におけるデータをプール解析した。このデータには二次治療以降にニボルマブを使用されたもので最低4年以上のフォローアップ例が含まれる。ランダム化第Ⅲ相試験(017と057)では全例が含まれている。6ヶ月の時点でのランドマーク解析を行い、その後の生存に関するアウトカムを決定した。6ヶ月時点での画像評価が不可能な症例を除去した。安全性については、一度でもニボルマブが投与されているものはすべて含まれている。4つの臨床試験において、664例のニボルマブ投与例の4年生存率は14%[11-17]、そのうちPD-L1=1%以上では19%、1%未満では11%であった。CheckMate017と057試験において、ニボルマブ群の4年生存率は14%で、ドセタキセルは5%であった。ニボルマブとドセタキセルのいずれでも6ヶ月時点での奏効例は、進行例より予後良好で、それぞれハザード比0.18[0.12-0.27]、0.43[0.29-0.65]であった。病勢制御例と、病勢進行例での比較では、それぞれハザード比0.52[0.37-0.71]、0.80[0.6-1.04]であった。また長期データでも新たな毒性は認められなかった。今回の研究から進行非小細胞肺癌においてニボルマブは、ドセタキセルより長い奏効期間を示し長期生存に有利であるものと考えられる。

感想
免疫チェックポイント阻害薬単剤で治療する機会は徐々に減っていますが、それでも多くの示唆を与えてくれる研究です。まずFig1Aでは4つの臨床試験でニボルマブ治療をした人の単純な長期生存が示されています。4年生存14%で、背景としてPS=0が多く、PD-L1発現が1%または10%以上、肝転移が少ないことが挙げられています。Fig2には6ヶ月の時点でのレスポンスによる生存曲線が示されています。この6ヶ月の時点でのレスポンスは、その時点においてということであり最大効果とは違います。これは生存バイアスを避けるための方法ですが、PR/CR、SD、PDではっきりと差が分かれています。これまで免疫チェックポイント阻害薬のSDは、意義付けがはっきりしていませんでしたが、これを見ると意味があるかもしれません。ただし、治療とは無関係に極端に腫瘍進行が遅いものが混じっている可能性もあるので注意する必要はあります。Fig3には2つのニボルマブ対ドセタキセルの臨床試験(017と057試験)におけるランドマーク解析の結果が示されます。比較対象があるので色々なことが読み取れます。生存曲線を重ねてみるとニボルマブSDがドセタキセルPR相当、ニボルマブPDがドセタキセルSD相当になっています。これはすごいことです。最も良い6ヶ月時点での奏効例では、4年生存率が58%に達し、中央値は未達でした。またFig4には2つの試験で、奏功したグループのみ抜き出した生存曲線の比較が示されています。これによるとニボルマブの長期効果は明らかで、最初の6ヶ月程度までは曲線が重なっていますが、あとは大きく差が開いています。日常臨床でもニボルマブにいったん反応するもののすぐに進行する例があることや、ドセタキセルに一旦反応しても、長く続かない例が多いことから考えても納得できる生存曲線となっています。Fig5にはPDになった後の生存比較が示されています。ニボルマブ、ドセタキセルの比較で、SD例においても中央値が10ヶ月対5.9ヶ月で、この群の間のハザード比が0.63で差があることから利益があると見ています。HPDが多く存在するならば、PD例においてニボルマブのPD後生存は、ドセタキセルより悪くなるはずですが、中央値では共に4ヶ月、生存曲線の形状もあまり差が見られません。
これまで様々な議論が免疫チェックポイント阻害薬に関してなされてきましたが、先行したニボルマブが長期効果という点で最も充実しています。今後初回治療や併用の長期データも出てくるでしょうが、臨床医としては実地ベースで再現性が確認できるのかというところに興味があります。臨床試験のデータはあくまでもモデルケース、カタログデータでしかありません。私は常々EBMは、実地データにおいて確認した上で確立すると考えています。この辺りのことはいずれ記事にしたいと思っています。