ADAと免疫療法

Correlation between serum adenosine deaminase activity and efficacy of anti-programmed cell death-1 antibody.

Saiki M et al.
Lung Cancer. 2019 Jul;133:4-9.
PMID: 31200826

Abs of abs.
血清アデノシンデアミナーゼ(ADA)活性は各種疾患に対する免疫反応のマーカーである。今回は血清ADAと治療効果との関係を見るため、化学療法または抗PD-1治療を受ける肺癌患者を対象に血清ADAの変化を観察した。化学療法または抗PD-1治療を受ける進行肺癌患者50人を対象とした。血清ADAは治療前と治療開始7日後およびその後のサイクルの投与前日に測定した。この血清ADAの変化と治療効果の関係を評価した。50人の患者のうち、20人は化学療法、30人は抗PD-1治療を受けた。化学療法を受けた患者において血清ADAは、奏効にかかわらず、ベースラインとday7の間に有意に減少した(PR/SD:-23%[-38 to +32; p=0.002], PD:-12%[-42 to +6; p=0.500])。逆に、抗PD-1治療を受けている患者では、PR/SDにおいて、血清ADAはベースラインからday7および次コース前日に有意に増加していた(day7:+6%[-10 to +34; p=0.034]、2サイクル目前日:8%[-5 to +37; p=0.002]、3サイクル目前日:9% [-3 to +55; p=0.002])。しかし、抗PD-1療法の効果がPDであった者においては有意な変化を示さなかった。さらに血清ADAの早期増加は、抗PD-1療法における無増悪生存期間の延長と関連していた(p=0.006)。このように血清ADAの変化は、抗PD-1治療における臨床的利益の予測に利用できる可能性がある。この関連性は決定的ではなく、さらなる研究が必要と考えられる。

感想
ADAはリンパ組織に豊富に存在し、Tリンパ球の増殖と分化に必須となっています。小児科領域ですが、ADA欠損症はリンパ球が減少し重篤な免疫不全を来し長く生きることができない病気です。ADAと抗がん剤との関連を調べた先行研究では、抗がん剤投与後にADAが下がると報告されています。TKIでどうなるのかは少し興味があります。今回も抗がん剤投与群の治療は80%が初回治療で、同様にADAは治療で低下しています。一方PD-1治療を受けたグループのADAは、奏効しているグループでは上昇傾向を見せ、奏功していないグループではばらばらという印象です。今回はADAを変化率で見ており、早期で奏功を見分けられないか考えるのは当然のことです。そのADAのday7での変化率のカットオフ値をROC解析で求めています。そのカットオフ値は95%と、増えた方がいいと言いながら減少したポイントがカットオフになるという、しっくりこない結果となっています。またday7でADAが増えたか減ったかで分けたPFSは非常に開いており、これが免疫療法の効果なのか、単にリンパ球が刺激される余力がある、つまり体力があることを示しているだけなのかは、今後厳密に検証していく必要があるでしょう。しかし今回の結果はPD-L1染色など、腫瘍側の因子を全く考慮せず、かつ簡便な方法でこれだけの結果が出せるということで優れた研究であると思います。NLRや腫瘍側の因子を加えてスコア化ができれば、なお精度が上がるかもしれません。