維持療法に適しているのはベバシズマブ、ペメトレキセド、それとも両者?

Pemetrexed, Bevacizumab, or the Combination As Maintenance Therapy for Advanced Nonsquamous Non-Small-Cell Lung Cancer: ECOG-ACRIN 5508.

Ramalingam SS et al.
J Clin Oncol. 2019 Jul 30:[Epub ahead of print]
PMID:31361535

Abs of abs.
進行非小細胞非扁平上皮肺癌においては、維持療法としてペメトレキセドかベバシズマブが使用されている。またこの両者の組み合わせの効果も報告されている。今回は最適な維持療法を検討するためランダム化試験を計画した。未治療の進行非小細胞非扁平上皮癌に対し、カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)+ベバシズマブ(15mg/kg)を4サイクル行い、進行が認められなかったものについてランダム化した。患者はベバシズマブ、ペメトレキセドあるいはその両者による維持療法のいずれかに割り付けられた。プライマリーエンドポイントは全生存期間で、ベバシズマブ群をコントロール群とした。1516人が登録され、874人(57%)がランダム化された。追跡期間中央値は50.6ヶ月で、ランダム化からの生存期間はペメトレキセドで15.9ヶ月、ベバシズマブで14.4ヶ月であった(ハザード比0.86[0.7-1.07]、P=0.12)。またペメトレキセド+ベバシズマブでは16.4ヶ月(ハザード比0.9[0.73-1.12]、P=0.28)であった。無増悪生存期間についてはそれぞれ4.2ヶ月、5.1ヶ月(ハザード比0.85;P=0.06)、7.5ヶ月(ハザード比0.67;P<0.001)であった。またグレード3,4の有害事象は29%、37%、51%であった。今回の研究から単剤のベバシズマブ、ペメトレキセドは維持療法として効果がある。一方で両者の組み合わせは、生存期間上乗せがないことと、毒性が増えることにより勧められないと考えられる。

感想
免疫療法の臨床試験ばかりの現在にあって、抗がん剤だけのエビデンスとしては最後発になるものです。今回の設定は、ペメトレキセド維持療法をベバシズマブ維持療法と比較、またペメトレキセド+ベバシズマブ維持療法をベバシズマブ維持療法と比較というように、同じコントロール群に対して2つの試験アームを走らせる方法です。厳密にいえば、continuousメンテナンスと、switchメンテナンスの比較も含まれています。全生存期間はランダム化からの比較で、初回治療として、ほとんど使われなくなったCBDCA+PAC+BEVで開始した場合の話となります。試験アーム間の比較は行わないという作法で、片側で有意水準を0.125においています。仮説は25%の死亡リスク減少を想定しています。したがってプライマリーエンドポイントにmetしなかったということになります。となると本試験の結論は「ベバシズマブ単剤による維持療法に比べ、ペメトレキセド単剤あるいは両者の組み合わせの優越性を証明できなかった」ということになります。今回のアブストラクトの結論は、”Single-agent bevacizumab or pemetrexed is efficacious as maintenance therapy for advanced nonsquamous NSCLC.”とあり、違和感を覚えます。カプランマイヤー曲線を見ると、ペメトレキセドとペメトレキセド+ベバシズマブ群はほぼ重なっており、ベバシズマブ群は離れています。このハザードは0.86と0.90ですが、どうせやるならベバシズマブでなくペメトレキセド維持療法をするという選択になるかと思います。
今年のASCOでは、日本からCBDCA+PEM+BEVで導入し、PEM維持療法とPEM+BEV維持療法を比較した試験も報告されています[abstr 9003]。それによればPEM+BEV 23.3ヶ月、PEM 19.6ヶ月、ハザード比0.87[0.72-1.04]、P=0.069でした。若干背景が異なりますが、場合によってはPEM+BEVでの維持療法も検討しても良いという結果です。私のBEVの解釈は、「無理する必要は全くないが、できそうな人には上乗せしてもよい」というものです。日本の結果も考慮しても、これまでの理解を変える必要はないでしょう。したがって今回の試験結果だけでは、PEM+BEV維持療法を否定というところまでは行かないと思います。