免疫療法単剤、腫瘍マーカー低下も早期効果指標となる

Early serum tumor marker dynamics predict progression-free and overall survival in single PD-1/PD-L1 inhibitor treated advanced NSCLC-A retrospective cohort study.

Lang D et al.
Lung Cancer. 2019 Aug;134:59-65.
PMID:31319996

Abs of abs.
血清腫瘍マーカー(STM)を用いて、免疫チェックポイント(PD-1/PD-L1)阻害薬単剤の治療モニタリングにおける有用性と予後との関連性を調べた。CEA、CA19-9、CYFRA21-1、NSEを非小細胞肺癌診断時に測定し、最初から上昇しているマーカーについて追跡した。STMの変化とICI導入との関連性、またRECIST評価による奏効判定、無増悪生存期間、全生存期間について検討した。単変量とステップワイズ多変量コックス回帰分析を用いて、STMと奏効がPFS、OSに与える影響を他の患者背景、腫瘍因子を交えて評価した。84人が対象となり、PFS中央値はSTMが低下した場合に11ヶ月と、増加した場合に比べ有意に延長した(2倍まで6ヶ月、2倍以上2ヶ月)。またSTM低下の全生存期間は中央値に達せず、増加例と比べて延長とも関連していた(2倍まで14ヶ月、2倍以上4ヶ月)。STM低下で縮小効果がSDあるいはPDであったものはSTM増加よりもPFS、OSが優っていた。PFSに関してはSTMの反応、RECISTでの縮小効果、PD-L1が有意に影響を与えていた。またOSについては、STMの反応、脳転移の存在、3レジメン目以上の因子が同定された。本研究から、ICI治療された非小細胞肺癌において、画像上反応がない患者において最初の評価におけるSTM低下はPFSとOSに影響を与え、良好なアウトカムと関係する。

感想
免疫療法単剤で行われた場合の腫瘍マーカー推移についての研究です。初回治療38%、2次治療41%、3次以降21%でニボルマブが39%、ペムブロリズマブが45%、アテゾリズマブが16%の集団が対象です。方法として、ICI開始時にCEA、CA19-9、CYFRA21-1、NSEを採取し、正常上限を超えていなくとも、最も上昇しているマーカーを”leading marker”としてピックアップし追跡しています。なお正常上限についてCEA=3.4ng/ml、CYFRA21-1=3.3 ng/mL、CA19-9=27U/mL、NSE=16.3 ng/mLで普段私たちが使っているものと微妙に異なっています。本文中ではrestagingと表現していますが、要するに評価を概ね6週後を目安に行っています。基準はニボルマブ4サイクル毎、ペムブロリズマブとアテゾリズマブは3サイクル毎か、増悪が疑われるときとされています。結果として、腫瘍マーカー低下例がPFS、OSが良いのは当然と言えますが、腫瘍マーカー増加例でも増加の程度が2倍を境にPFS、OSがうまく分かれてくる点です。さらに画像評価がSD/PDであっても腫瘍マーカー低下例においては、PRかつ腫瘍マーカー増加例とOSが近く、ひょっとすると腫瘍マーカー低下だけでも免疫療法の利益がある可能性を示唆します(Fig2)。逆に画像上増悪、腫瘍マーカー増加では、ほとんど勝算がなくpseudoprogressionを期待する方が間違っているとも言えそうです。
肺癌診療ガイドライン2018年版によれば、腫瘍マーカーについて「肺癌の検出には腫瘍マーカーは行わないよう提案する。」とされています。ただ検診目的での使用には否定的ですが、診断補助、効果のモニタリング、再発の補助として行うように推奨されています。これは従来の抗がん剤治療のデータを元にしたデータであり、免疫療法単剤でも使えるということになります。これまでNLR、栄養因子、早期irAEなど様々な効果予測因子が報告されています。実感としてもこれらの因子は使えますし、腫瘍マーカーも感覚としては使えそうに思うので調べてみたいところです。