ロルラチニブとALKバリアント3

Efficacy of Lorlatinib in Treatment-Naive Patients With ALK-Positive Advanced NSCLC in Relation to EML4::ALK Variant Type and ALK With or Without TP53 Mutations.

Bearz A et al.
J Thorac Oncol. 2023 Nov;18(11):1581-1593.
PMID:37541389.

Abs of abs.
第3世代のALK-TKIであるロルラチニブは、第3相CROWN試験において、未治療ALK陽性患者の予後がクリゾチニブより優れていた。今回は血漿循環腫瘍DNA(ctDNA)と腫瘍組織プロファイリングを用いて、奏効との相関を検討した。ALK融合変異およびTP53変異の有無次世代シーケンサーで評価した。評価項目は奏効率、奏効期間、無増悪生存期間とし、ALKバリアントとTP53変異に分けて評価し、独立中央審査により判断した。ロルラチニブ群62例、クリゾチニブ群64例のctDNAからALK融合遺伝子が検出された。奏効率はロルラチニブの方が高いものは、EML4::ALKバリアント1(v1;80.0%対50.0%)およびバリアント2(v2;85.7%対50.0%)であったが、バリアント3(v3;72.2%対73.9%)では両群間で同等であった。ロルラチニブ群のPFS中央値は、バリアント1およびバリアント2では未達、バリアント3では33.3カ月であった。クリゾチニブ群のPFS中央値は、それぞれ7.4カ月、未到達、5.5カ月であった。TP53遺伝子変異の有無にかかわらず、また既存のバイパス経路耐性変化を有する患者においても、ロルラチニブはクリゾチニブに対して奏効率およびPFSを改善していた。ロルラチニブ群では、TP53変異があるとPFSが短縮していた。ctDNA解析の結果は、組織検体で観察された結果と同様であった。未治療のALK陽性患者は、EML4::ALK変異、ALK変異、TP53変異、バイパス経路抵抗性とは無関係に、クリゾチニブと比較してロルラチニブにより奏効率向上およびPFS延長が認められた。

感想
CROWN試験[Shaw AT NEJM2020 PMID:33207094]はロルラチニブとクリゾチニブの比較試験です。この試験では特に中枢神経系への効果が高く注目されました。初回治療の選択肢にはなりますが、先行するアレクチニブも十分に効果があることから取って代わるところまでは行っていません。今回はALKバリアント毎とTP53がある場合にどうなるかというデータになっています。EGFR変異と同様TP53変異の併存はPFS短縮と関連していました。EML4-ALKのバリアントは、EML4のどこでALKと結合するかにより15種類ほどのタイプに分けられます。発見者グル―プによる総説[曽田 肺癌2012];52:136-141]は、日本語で読みやすく10年前のものですが今でも十分その価値があります。
さて一般的に多いのはバリアント1と3ですが、クリゾチニブではバリアント3に対する効きが良くないと言われています[Lin JJ JCO2018 PMID:29373100]。今回ロルラチニブはバリアント3に対しても他のバリアントに遜色なく効果があり、事実とすれば注目すべき点です。ちなみにアレクチニブ、ブリグチニブについても同様の傾向が報告されており、今後他の試験でも確かめられればバリアントによる治療戦略が必要かも知れません。しかしその前に商業ベースでバリアント測定ができるようになる必要があります。