ALK陽性はできるだけ早くTKIを使うべき

Impact of delaying initiation of anaplastic lymphoma kinase inhibitor treatment on survival in patients with advanced non-small-cell lung cancer.

Sheinson D et al
Lung Cancer. 2020 May;143:86-92.
PMID:32276206

Abs of abs.
ALK陽性肺癌において様々な理由により治療開始が遅れることがある。今回はALK阻害薬導入が遅れる要因と、それが及ぼす生存期間への影響、バイオマーカー検査の前に行われた抗がん剤治療の影響について調べた。匿名化データベースからALK阻害薬治療を受けた患者を抽出し、バイオマーカー検査から早期に受けた群と、遅れて受けた群に層別化した。さらにそれぞれのコホートを抗がん剤治療を受けたタイミングとALK陽性結果が判明した時期によって層別化した。処方-時間マッチング(PTM)によりALK阻害薬治療ならびに抗がん剤治療の遅れと生存期間を調べた。さらにPTM前後での背景因子を調整したCox比例ハザードモデルを使用し、ALK阻害薬治療の遅れに関連する因子と、遅延と生存期間に対する抗がん剤治療の効果を調べた。442人を対象とした早期使用コホートと遅延使用コホートを比較した。ALK阻害薬開始が3週より遅れた患者群では2倍以上の死亡リスク増加(2.05[1.13-3.71])が観察された。受診回数、年齢、抗がん剤使用は3週以上の治療開始遅延と関連していた。ALK検査の結果判明前あるいALK阻害薬治療前に抗がん剤治療を受けているかどうかは、生存と有意な関連は見られなかった(調整ハザード比1.02[0.64-1.63])。またALK陽性の結果の後に抗がん剤を完遂しても生存は改善されていなかった(調整ハザード比0.84[0.38-1.9])。本研究から進行非小細胞肺癌においてALK阻害薬の治療を早急に始めた方が生存に良い影響を与える可能性があると考えられる。

感想
バイオマーカー検査が増えてきたのと、保険償還を考えながら検査を追加するため治療開始は遅れる方向にあります。今回はALK阻害薬の治療の遅れに関して、細かいけれども気になるところにフォーカスした研究です。テーマは4つあり、1.治療遅延に関連する要因、2.ALK阻害薬の遅延が生存に影響するかどうか、3.ALK阻害薬開始前の化学療法が生存に影響するか、4.ALK陽性結果を知りつつ抗がん剤治療を継続することで生存に影響するかです。
まず治療遅延に関連する要因ですが、受診回数と年齢(65歳以上)、抗がん剤治療の存在がありました。ALK陽性はどうしても若年者に多いので、検査提出が遅くなることが考えられます。次にALK阻害薬開始と生存との関連ですが、やはり早く開始できた方が予後良好になっていました。先行する抗がん剤治療の存在については、生存曲線が交差しておりなんとも言えませんが、概ね抗がん剤無しの方が上を行っており、おそらくは抗がん剤は先行しない方が良いと思われます。ここは抗がん剤を先行しても変わらないEGFR-TKIと少し違うところかも知れません。また抗がん剤投与中にALK陽性が判明して、その後も抗がん剤を一応完了まで投与して、その後ALK阻害薬を投与した群と、すぐ切り替えた群とでは生存に有意な差は見られませんでした。今回の研究から、ALK陽性と分かった時点でなるべく早くALK-TKIを開始するのがよいだろうと思われます。