CheckMate-816 術前治療の全生存

Overall Survival with Neoadjuvant Nivolumab plus Chemotherapy in Lung Cancer.

Forde PM et al.
N Engl J Med. 2025 Jun 2. Epub ahead of print.
PMID:40454642.

Abs of abs,
第3相試験で切除可能な非小細胞肺癌に対する術前療法としてのニボルマブと化学療法併用は、病理学的完全奏効と無イベント生存率を著明に改善した。しかし全生存期間に関するデータが必要である。この試験では、ステージIBからⅢAの切除可能例を、ニボルマブと化学療法の併用療法または化学療法単独を3サイクル受けた後、手術を受けるようにランダムに割り付けた。主要評価項目は無イベント生存率と病理学的完全奏効とした。計358名の患者が、ニボルマブと化学療法の併用(179名)または化学療法単独(179名)に割付られた。ニボルマブと化学療法併用が有意に優れていた(死亡のハザード比0.72[0.52-0.10];P=0.048)。中央値68.4ヶ月の追跡期間において、ニボルマブと化学療法の併用群の5年全生存率は65.4%、化学療法単独群は55.0%で、ほとんどのサブグループで一貫した結果が得られた。探索的解析では、病理学的完全奏効を示した患者におけるニボルマブ+化学療法群の5年全生存率は95.3%[82.7-98.8]、そうでない患者では55.7%[46.9-63.7]であった。手術前の循環腫瘍DNA(ctDNA)のクリアランスを有する患者では生存率は75.0%、クリアランスのない患者では52.6%であった。新たな安全性情報はなかった。切除可能な非小細胞肺癌において、化学療法単独と比較して、術前ニボルマブ+化学療法の3サイクルは全生存率を有意に改善した。

感想
この試験の結果は無イベント生存率やPCRについてはすでに報告されています[Forde PM NEJM2022 PMID:35403841]。結果はEFSが31.6ヵ月vs20.8ヵ月:ハザード比0.63、PCR率24.0%vs2.2%と報告されています。今回はOSに関する報告の追加です。これまではEFSで代替されていましたので、術前治療でOSまではっきり差が出たというのは大きなことです。このCheckMate-816はプロトコール改定が数回なされ、当初はPD-L1=1%以上を対象にしたMPR率を術前イピリムマブ+ニボルマブ vs 化学療法で見るという試験でした。それが途中で今回の試験群であるニボルマブ+化学療法が新たな試験群として追加され、ニボイピが廃止されプライマリーエンドポイントもEFS(今回のOSも結果としてはαの割り振りが当てられ判定される)とPCRとなっています。今では誰も何も言いませんが、臨床試験を語る上では知っておいても良い内容です。もう少し言うと今回のOSのP値は0.048ですが、これでも十分ぎりぎりですが、実は有意水準は0.0482であり薄氷の判定であったことも豆知識です。
サブグループ解析では、アジア人、PD-L1>=50%が試験治療群でOSが良い傾向にありました。PD-L1<1%ではハザード比0.89とあまり差がありませんが、5年生存は50%を越えており、術前化学療法の価値を示すものかも知れません。また試験治療群でPCRを示した患者の5年生存は95.3%、示さなかった患者は55.7%でした。MPRのではそれぞれ86.3%、52.8%でした。術前のctDNAは消失していればニボルマブ有無に関係なく5年生存は7割近くありますが、消えていないと6割弱と差が見られます。PCRとctDNAの消失には関連がありどちらかにより術後治療をすべき集団が見えてきそうです。