cMET発現に対する抗体薬物複合体療法

Telisotuzumab Vedotin Monotherapy in Patients With Previously Treated c-Met Protein-Overexpressing Advanced Nonsquamous EGFR-Wildtype Non-Small Cell Lung Cancer in the Phase Ⅱ LUMINOSITYTrial.

Camidge DR et al.
J Clin Oncol. 2024 Sep 1;42(25):3000-3011
PMID:38843488

Abs of abs.
テリソツズマブべドチン(Teliso-V)は、モノメチルウリスタチンE細胞毒性ペイロードを有するc-Met標的抗体薬物複合体である。 第Ⅱ相LUMINOSITY試験は、非小細胞肺癌に対してTeliso-Vによる治療に最適なc-Met発現を同定し(ステージI)、有効性評価のために選択集団を拡大して行った(ステージⅡ)。 ステージⅡでは、EGFR野生型非小細胞肺癌が登録された。 登録基準は進行非小細胞肺癌、全レジメン2個以下、c-Met蛋白過剰発現は、3+染色を示す腫瘍細胞が25%以上(高度[50%以上3+]、中等度[25%以上-50%未満])と定義された。Teliso-Vは1.9mg/kgで2週間に1回投与された。プライマリーエンドポイントは、独立判定による奏効率であった。 172人にステージI/ⅡでTeliso-Vが投与された。 奏効率は28.6%[21.7-36.2];c-Met高34.6%[24.2-46.2];c-Met中等度、22.9%[14.4-33.4])であった。 奏効期間中央値は8.3ヵ月(5.6-11.3;c-Met高9.0[4.2-13.0];c-Met中等度 7.2 [5.3 to 11.5])。 全生存期間中央値は14.5ヵ月(9.9-16.6;c-Met高14.6[9.2-25.6];c-Met中等度、14.2[9.6-16.6])であった。 無増悪生存期間中央値は5.7ヵ月(4.6-6.9;c-Met高5.5[4.1-8.3];c-Met中等度 6.0ヵ月[4.5-8.1])。 最も多くみられたグレードを問わない治療関連有害事象は、末梢性感覚神経障害(30%)、末梢性浮腫(16%)、疲労(14%)であり、最も多くみられたグレード3以上の有害事象は末梢性感覚神経障害(7%)であった。 Teliso-Vは、c-Met蛋白過剰発現の非扁平上皮EGFR野生型非小細胞肺癌、特にc-Met高値例に対して、持続的な奏効と関連した。 副作用は一般的に管理可能であった。

感想
テリソツズマブベドチンは、MET抗体テリソツズマブと微小管阻害剤モノメチルアウリスタチン E (MMAE) をリンカーで結合させた構造となっています。いわゆるミサイル療法というもので、METを目印にして腫瘍に結合、抗がん剤を集中的に効かせようとする発想になります。理屈は非常によくわかるのですが、選択的に結合、さらに良いタイミングでリンカーから外れなくてはならず非常に難しいことをやっています。これまでも失敗例は数多くありましたが、ようやく成功しそうなものが出てきており、Teliso-Vもその一つです。
METはEGFR-TKIの耐性機序としても有名で、本試験においてまず野生型とEGFR遺伝子変異陽性の非扁平上皮癌の2つの集団と、扁平上皮癌集団で試されています。EGFR遺伝子変異陽性に関しては奏効率11.4%、PFS4ヶ月と物足りない結果でした。扁平上皮癌も10.7%、3.7ヶ月と残念な結果であったためMET陽性のEGFR野生型に絞って拡大コホートを追加し28.6%の奏効率となりました。生存曲線をみるとMET高度、中等度でPFSとOSで大きな差がなく、この集団ではある程度期待が持てそうです。毒性として肺臓炎、末梢神経障害に加えて、眼毒性が変わったところです。特に肺臓炎は、17人(9.9%)の患者で発生し (Grade4、1例、Grade5、3例)、日本人では気になるところです。HER2やKRASなど、少しづつ2次治療も層別化されてきました。今回のTeliso-Vは現在ドセタキセルとの比較第Ⅲ相試験が行われており、結果が待たれます。