EGFR遺伝子変異陽性、切除後の予後は

Effect of epidermal growth factor receptor gene mutation on the prognosis of pathological stage II-IIIA (8th edition TNM classification) primary lung cancer after curative surgery.

Isaka T et al.
Lung Cancer. 2021 Dec;162:128-134.
PMID:34775216.

Abs of abs.
今回の後ろ向き研究は、病理学的Ⅱ-ⅢA期のEGFR遺伝子変異陽性肺癌患者の治癒手術後の予後を明らかにすることを目的とした。2010年1月から2020年12月までに治癒切除を受けEGFR遺伝子変異を測定した539例を登録した。19Del/L858Rを持つ肺癌(Mt,n=126)およびEGFR遺伝子変異が野生型の肺癌(Wt,n=413)患者の無再発生存率(RFS)および全生存率(OS)を解析した。Cox回帰で、各病期におけるEGFR遺伝子変異のRFSとOSへの影響を評価した。病理学的Ⅱ期におけるEGFR-Mt/Wtは56/256人、ⅢA期では70/157人であった。EGFR-Mt/Wtの5年RFS率は、Ⅱ期で46.6%/52.0%(p=0.787)、ⅢA期で17.4%/29.7%(p=0.929)であった。5年OS率は、Ⅱ期で92.0%/65.7%(p=0.001)、ⅢA期で56.0%/39.3%(p=0.016)であった。EGFR-Mtのあることは、ⅢA期のOSに対する独立した予後因子ではなかった(ハザード比0.95[0.51-1.76];p=0.872);しかしながら、EGFR-MtはⅡ期患者のOSに対する独立した有利な予後因子であった(ハザード比0.59[0.36-0.96];p=0.034)。今回の結果からⅡ期、ⅢA期の肺癌患者のOSはかなり良好であった。TNM分類に加えてEGFR遺伝子変異をみることでより正確な予後予測につながる可能性がある。

感想
年齢中央値は70歳程度の日本のデータです。EGFR遺伝子変異陽性例の喫煙率が44%、対する野生型が87.9%とかなり喫煙の影響下にある集団です。術後補助化学療法の入っている割合が、51.6%と38.5%とかなり低くまさに日常臨床を反映したデータです。EGFR遺伝子変異陽性の方が少し再発率が高く、TKIが使えるため結果としての予後は少し良いくらいの印象ですが、まさにその通りになっています。サブ解析でEGFR遺伝子変異陽性例に対しての術後補助化学療法は効果が低いかもしれない(RFSの予後因子とならない)と述べています。これは以前に読んだ論文の結果と一致し、日常臨床でもそのように感じます。ただ術後のオシメルチニブの適応が出てくるまでは淡々と術後補助化学療法を進めるべきでしょう。