Durvalumab after concurrent chemoradiotherapy for sensitizing epidermal growth factor receptor-mutant stage III non-small cell lung cancer: A Japanese Real-World data analysis.
Fujisaki T et al.
Lung Cancer. 2025 May 27 Epub ahead of print.
PMID:40480013.
Abs of abs,
局所進行性EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌において、化学放射線療法後のデュルバルマブの有効性と安全性については議論がある。今回の後ろ向きコホート研究では、2015年7月から2022年6月までに、日本の48施設でCCRT完了後進行のなかった切除不能Ⅲ期EGFR変異陽性肺癌の治療成績を分析した。再発後にEGFR遺伝子変異が判明した患者は除外している。群間比較は傾向スコアマッチングで行った。主要評価項目はPFS、副次評価項目はOSとデュルバルマブ後のEGFR-TKIの安全性とした。対象162例中、106例がCCRT後に維持療法としてデュルバルマブを投与され、56例は投与されなかった。傾向スコアマッチングにより、56例がデュルバルマブ群とCCRT単独群にマッチングされた。デュルバルマブを投与された患者のPFSは、CCRT単独投与群に比べて有意に長かった(26.8ヶ月 [13.9-NA] 対 11.1ヶ月 [9.0-18.2];ハザード比0.52 [0.33-0.83];p=0.005)。デュルバルマブ投与後に早期にオシメルチニブを投与すると、グレード3以上の肺臓炎が多くなる傾向があったが、EGFR-TKIによるグレード≥3の有害事象の頻度に差はなかった(23.5%対20.8%)。本研究からCCRT後にデュルバルマブを投与すると、EGFR遺伝子変異陽性肺癌でもPFSが延長される。オシメルチニブの投与タイミングを適切に管理すれば、デュルバルマブは安全に投与できる。
感想
EGFR遺伝子変異陽性例に対する免疫療法の意義については議論が続いています。今回はEGFR遺伝子変異陽性例にCCRTをした後の免疫療法の有無による予後の貴重な情報が提供されています。傾向スコアマッチング後が主たるデータですが、実はしなくとも傾向は大きく変わらないようです。補遺を見ると全患者でそのまました場合のPFSは21.3ヵ月対11.1ヵ月 ハザード比0.57、OSはハザード比0.56(傾向スコアマッチング下で0.61)でした。傾向スコアは年齢、性別、病期を共変量として規定したと書かれており、これだけならば少し甘い気がします。デュルバルマブの発売は2018年8月からなので、そもそも使えなかった人とあえて使わなかった人が混じっていると考えられます。最近全体の予後が伸びており[Satoh H LungCancer2025 PMID:40020466]、デュルバルマブを使えたということは比較的最近の症例であるわけで、時代による差というものも存在しているかも知れません。第Ⅲ相LAURA試験[Lu S NEJM2024 PMID:38828946]の成功によりこの集団の標準治療はCCRT後にオシメルチニブということになりますが、それでもPD-L1高値例や喫煙者などデュルバルマブを入れた方が良さそうな集団は残ります。EGFR遺伝子変異陽性に対するデュルバルマブの可能性を示したことで評価されるべき研究と感じました。