EGFR-TKI後のペムブロリズマブ+化学療法

PhaseⅢ KEYNOTE-789 Study of Pemetrexed and Platinum With or Without Pembrolizumab for Tyrosine Kinase Inhibitor‒Resistant, EGFR-Mutant, Metastatic Nonsquamous Non-Small Cell Lung Cancer.

Yang JC et al.
J Clin Oncol. 2024 Aug 22:Epub ahead of print.
PMID:39173098.

Abs of abs,
EGFR-TKIは、EGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対する標準治療であるが、ほとんどの患者は進行する。今回はTKI抵抗性となった症例に対するペメトレキセドおよびプラチナベースの化学療法とペムブロリズマブの併用療法または非併用の無作為化二重盲検第Ⅲ相KEYNOTE-789試験の結果を報告する。病理学的にⅣ期で、DEL19またはL858RのEGFR遺伝子変異が証明され、EGFR-TKI治療後に進行が認められた患者を、ペメトレキセドおよびカルボプラチン/シスプラチンを3週間に1回投与する4サイクル、その後ペメトレキセドを維持し、ペムブロリズマブ200mgまたはプラセボを3週間に1回35サイクル投与する群に1:1で無作為に割り付けた。 プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間と全生存期間の2つであった。 有効性の境界は、PFSとOSについて片側P=0.0117とした。 結果 492例の患者がペムブロリズマブ+化学療法群(n=245)とプラセボ+化学療法群(n=247)に無作為に割り付けられた。PFS中央値は、ペムブロリズマブ+化学療法群5.6カ月、プラセボ+化学療法群5.5カ月であった(ハザード比0.80[0.65-0.97]、P=0.0122)。 初回解析では、OS中央値はそれぞれ15.9ヵ月対14.7ヵ月であった(ハザード比0.84 [0.69-1.02]; P=0.0362)。 グレード3以上の治療関連有害事象は、ペムブロリズマブ+化学療法群の43.7%に発現したのに対し、プラセボ+化学療法群では38.6%であった。 KEYNOTE-789試験において、TKI抵抗性EGFR遺伝子変異陽性例に対するペムブロリズマブ+化学療法は、プラセボ+化学療法に対してPFSまたはOSを有意に延長しなかった。

感想
結果が出ずネガティブに終わった試験です。ネガティブに終わった原因は、統計設定、患者選択などではなく、おそらく純粋に免疫チェックポイント阻害薬を上乗せしてもEGFR mutant全体としては効果がないからでしょう。となるとサブグループ解析を細かく見て、今後に役立つ示唆を得るというのが、結果を活かす方向性でしょう。全体としてOSはペムブロリズマブ上乗せでわずかに上を行っています。15.9ヵ月対14.7ヵ月でハザード比0.84、絶対値にして1.2ヵ月の改善となります。臨床的に意味ある差か?と言われると返事に窮します。PFSのサブグループを見てみると、喫煙者、初回治療がオシメルチニブ、でペムブロリズマブ群が良好に見えます。TPSも50%以上が良さそうです。しかしOSになるとほとんど差がないように見えます。またTPSは50%以上よりも1-49%のグループの方がペムブロリズマブ群有利に見えます。ただしこれらの差はOSでは見て取れません。EGFR変異別でもさしたる傾向はありません。IMpower150や類似試験(エディトリアルにまとめがあります)をみると、この集団には現在血管新生阻害薬との組み合わせにわずかな希望が残っていますが、血管新生阻害薬の適応という面で大きく制限がかかります。オシメルチニブで決して稀ではない血栓症がある場合除外され、結局それは予後不良につながるので、根本的な背景の差を見ている可能性も否定できません。
さて今回はオシメルチニブPD後が対象でしたが、FLAURA2が導入されている場合はどのように考えていけばよいのでしょうか?プラチナも使っている、ICI単剤では効果がいまいちということで、プラチナレジメンも違うのでIMpower150が候補になりますが、保険が通るかはこれからの課題です。いずれにしろ今後EGFR変異に対して、ICIが担う役割が大きくなるとは思えません。