Exon20 insに対するオシメルチニブ倍量投与

High dose osimertinib in patients with advanced stage EGFR exon 20 mutation-positive NSCLC: Results from the phase 2 multicenter POSITION20 trial.

Zwierenga F et al.
Lung Cancer. 2022 Jun 23;170:133-140.
PMID:35777160.

Abs of abs.
エクソン20欠失/挿入変異(EGFRex20 +)を有する進行性非小細胞肺癌に有効な治療選択肢は少ない。高用量の第三世代TKIであるオシメルチニブは、EGFRex20に対してin vitroで有望である。臨床試験POSITION20は、EGFRex20+、T790M陰性患者に対し160mgのオシメルチニブ投与する単アーム第Ⅱ相多施設共同研究である。未治療、無症候性脳転移も許容された。主要評価項目は、奏功率(ORR)、副次的評価項目として、奏効期間(DoR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、治療関連有害事象(trAE)を取り上げた。2018年6月から2021年10月にオランダの5施設で25人が登録された。年齢中央値は70歳(47~87)、20例(80%)が女性、治療ライン数中央値は1(0~3)であった。エクソン20の変異は、A763とL777の間に密集していた。最も一般的なエクソン20変異は、p.(N771_H773dup) (n=3) と p.(A767_V769dup) (n=3)であった。ORRは28%[12-49]、7人がPR、DoR中央値は5.3カ月(2.7-27.6)であった。PFS中央値は6.8カ月[4.6-9.1]、OS中央値は15.2カ月[14.3-16.0]であった。有害事象として、下痢(72%)、皮膚乾燥(44%)、倦怠感(44%)でした。中止理由としては、病勢進行14人(56%)が最も多かった。
POSITION20試験では、オシメルチニブ160mgを投与されたEGFRex20+NSCLC患者において、奏効率28%、毒性は許容範囲であり、ある程度の抗腫瘍活性が確認された。

感想
Ex20insの治療開発は難航しています。Ex20ins変異はATP結合ポケットを変形させ、同部位へのTKIの結合を阻害していると考えられています。EGFR遺伝子変異陽性例での頻度は数%程度とされていますが、変異部位が不均一なためPCRでは見逃しも多いようです。TKIは第1・2世代で10%に届かず、オシメルチニブの通常量でも奏効例がない研究も複数存在します。理論上はオシメルチニブ高用量で治療域に達するため今回の倍量オシメルチニブが計画されました。奏効率は30%弱で、waterfall plotを見ると評価可能であった20例に何らかの縮小効果を認めています。特に脳転移には全例(n=3)奏効しています。有害事象も下痢、皮膚乾燥、倦怠感以外に、呼吸困難感(32%)、爪囲炎(36%)など何とか許容範囲内といったところでしょうか。気になる肺臓炎の報告はありません。他の薬剤としてはポジオチニブ、モボセルチニブ(TAK-788)、アミバンタマブ(JNJ372)が期待されていますが、オシメルチニブ倍量が現状で対応できる最善の手ではないかと思います。