2次治療後の胸膜中皮腫の予後スコア

A prognostic score for patients with malignant pleural mesothelioma (MPM) receiving second-line immunotherapy or chemotherapy in the ETOP 9-15 PROMISE-meso phase III trial.

Luigi Banna G et al.
Lung Cancer. 2022 Jul;169:77-83.
PMID:35660972.

Abs of abs.
治療歴のある悪性胸膜中皮腫(MPM)の奏効に関連する臨床背景および検査値でのパラメータはあまりない。今回はペムブロリズマブ+化学療法を評価するETOP 9-15 PROMISE-meso第Ⅲ相試験の患者から予後予測マーカーを検討した。144名の全コホートを対象に、無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の予後予測値について、ベースラインの臨床背景と検査値を後ろ向きに解析した。項目は、免疫炎症指標(好中球-リンパ球比[NLR]、全身免疫炎症インデックス[SII]、LDH)と、その他の予後に関する既知の指標で構成された。カットオフ値は転帰とは独立して選択された。全コホートにおけるPFSのCox解析に基づいて、MPMにおける有効な予後スコアであるEORTCスコアに配慮し、独立した予後因子の組み合わせを検討、患者の予後層別化を示す危険因子モデルを構築した。すべてのモデルは、組織型で層別し、治療法によって調整した。全コホートにおける層別多変量解析では、高SII(ハザード比(HR)2.06[1.39-3.05])および低ヘモグロビン(HR 1.62[1.06-2.50])はPFS悪化と関連していた。これら2つの予後因子に基づき、中皮腫リスクスコア(MRS)を構築し、3つのPFSリスク予後カテゴリー(それぞれ0、1、2のリスク因子による良好、中間、不良)を設定した(対応するコホートの割合:24%、34%、42%、PFS中央値:5.8カ月、4.2カ月、2.1カ月)。MRSは、全体およびEORTCグループ内で、PFSとOSの予後を層別化した。治療利益に関する有意な予測因子はなかった。今回考案したMRSは、患者の予後を予測することができ、既治療患者あるいはEORTCスコアと併用し予後を調整することが可能であった。

感想
EORICスコアは予後スコアとして知られ、中皮腫の世界では定番となっています。スコア=0.55 (if 白血球数>8,300/μL) + 0.60 (if PSが 1 か 2) + 0.52 (組織が推定なら1) +0.67 (肉腫型であれば1) + 0.60 (男性なら1)と計算されます。このスコアが報告されたのは1998年で免疫療法はおろかペメトレキセドもない時代ですのでそろそろ見直しが必要かも知れません。そんな中2次療法の化学/免疫療法を試した場合どう予測されるかを検討しています。SII=NLR×血小板数、ヘモグロビン数が予後層別化因子として抽出されたため、それぞれ1250以上と正常基準値未満を1としてスコア化し、0,1,2で生存曲線を書いてみるとうまく分かれたというのが論文の趣旨になります。予後スコアは各種開発されていますが、今一つ普及しないのは暗記できるほど簡単なものが少ないからで、特に多変量解析の係数を持ってくるものは複雑すぎます。また今回のSIIのような指標は事実としては確かにそうなのでしょうが、理屈がうまくつけられません。比や掛け合わせを指標とする際は、これが弱点になります。有名になってしまったNLRも反比例の関係にあるものを、比にすることでよりはっきりするだけで結局それが何を意味するのかはよくわかっていません。