The rechallenge benefit score: A clinical decision tool for patients progressing after immunotherapy.
Plazy C et al
Eur J Cancer. 2025 Nov 15 Epub ahead of print.
PMID:41275528.
Abs of abs,
進行非小細胞肺癌の大半は、初回治療として免疫チェックポイント阻害剤を投与される。進行時には治療選択肢が限られるため、ICIの再投与は重要な戦略となる。しかし、恩恵を受ける可能性のある患者を特定することは依然として困難である。本研究では、治療指針となる予測スコアを提示する。フランス国内16施設でICI再投与を受けたNSCLC患者80例を対象に、初回2サイクル投与前に実施された17項目のルーチン血液検査データを解析した。ロバストな機械学習アプローチを用い、再投与中の無増悪生存期間(rPFS)に関連する生物学的パラメータを同定し、rPFSに基づき患者を層別化できる統合スコアを開発した。その予測精度は、ICI後に化学療法を受けた患者群(n=82)および初回免疫療法中の転帰が評価された患者群(n=252)との関係で検証した。臨床的特徴のみでは、ICI再投与に反応する可能性が高い患者を確実に特定するには不十分であることが判明した。臨床的特徴に関わらず、ICI再投与による長期的な臨床的利益を得られる可能性が高い患者を特定する「再投与利益スコア(RBS)」を確立した(C-index 0.79)。RBSスコアが低い患者群では、高い患者群と比較してrPFS中央値が有意に延長した(それぞれ6.4ヶ月と1.9ヶ月;p<0.0001、ハザード比0.31、[0.17-0.55])。特に、RBSスコアは再投与に関する特異性を有し、化学療法群や初回ICI治療群では有益性を予測しなかった。ICI再投与の恩恵を受ける可能性が高い患者を選別するRBSスコアを同定・検証した。臨床的特徴だけでは不十分であるため、本知見は過去のICI治療中に疾患進行を経験した患者の治療戦略の指針となり得る。
感想
TKIと同じようにICIの再投与の意義はよくわかっていません。しかし日常臨床ではしばしば直面する課題です。多くはPD-L1高値、初回でよく効いたなど何らかのポジティブな要素を加味して決定すると思います。今回は再投与の利益をPFSの延長と定義して、何らかのスコア化ができないか、という話です。結論から言うと臨床背景からはスコア化できず、検査値でスコア化できた、という話になります。因子選択並びに多変量解析の精度アップにBOLASSOアルゴリズムが使われていますが。これは前回取り上げたElastic Net回帰でのLassoにブートストラップ(Bootstrap)を組み合わせ更に向上させたもので、Rではbolassoとして実装可能です。今回の大きな問題点としては、PD-L1発現のデータが全く考慮されていないことが挙げられます。
さて今回の構想自体は面白いのですが、論文が分かりにくいので整理します。まずICI再投与とは「毒性、病勢進行、治療完了のため最初のICIを中止した後、少なくとも12週間後」に抗PD-1/PD-L1投与されたことを指します。そしてスコア(RBS)は、ICI再投与時のベースライン値と、再投与2コース投与前値を使います。
RBS:0.569×dNLR+0.195×MLR+0.0151×AST−0.502×dNLR_Kin−0.0926×ALB−0.00705×ALP
最適カットオフは、−2.42です。
(注:原文にはALPではなく”APL”と書かれています。文脈とスコア計算WEBページからALPの誤字と考えます)
dNLR=好中球数/(白血球数-好中球数)(注:これも補遺表では”好中球数/(リンパ球数-好中球数)”と書かれているが明らかに間違い)
MLR = 単球/リンパ球数
Kineticsはペースライン値/再投与2コース投与前値
しかし本来は再投与前に投与意義があるかを知りたいので、ベースライン値のみを使用したスコア式も考案され
修正RBS(mRBS):0.333×dNLR + 0.312×MLR + 0.014×AST -0.08×ALB -0.0043×ALP
最適カットオフは-2.2
結果は大差ないようです。
ちなみに抗がん剤だけのグループではRBSのカットオフ値-2.42を使用して層別してもPFSに大きな差が見られませんでした(Fig2D)。また初回のICI治療についてもこのカットオフは機能しませんでした。これらを反映して再治療に特異的なスコアと主張しています。私はスコア化の話は結構好きで、それは単純なデータで未来を見通すことに面白味を感じるからです。今回のスコアが使えるかどうか、実地でも振り返って見たいと思います。