Ramucirumab plus atezolizumab in patients with stage IV non-small cell lung cancer previously treated with immune checkpoint inhibitors.
Herzog BH et al.
Lung Cancer. 2022 Nov;173:101-106.
PMID:36179540.
Abs of abs
プラチナ製剤による化学療法やICI投与後に進行したIV期非小細胞肺癌に対する治療選択肢は少ない。ICIとVEGF阻害剤の併用は、未治療患者において有望な成績が示されている。今回は単一施設の第Ⅱ相試験として行われ、ICIを含む少なくとも1レジメンの治療を受けた進行非小細胞肺癌に対し、ラムシルマブ10mg/kgとアテゾリズマブ1200mgを21日毎に投与し、病勢進行または忍容できない毒性が出るまで継続した。主要評価項目は、主治医評価の奏効率である。副次評価項目として、臨床的に利益があった割合、全生存期間、無増悪生存期間、忍容性とした。2019年6月から2021年4月の間に21人が登録された。年齢中央値は67歳(42~82)、17人(81%)が女性、15人(71%)が非扁平上皮癌であった。治療前の投与ライン数の中央値は3(2~8)、ICIのライン数は1(1~3)であった。効果はCR1例含む奏効率4.8%、SD16例(76.2%)、臨床的な利益があったものが80.9%であった。PFS中央値は3.4ヶ月、OS中央値は16.5ヶ月であった。主な有害事象として高血圧(86%)、タンパク尿(67%)、吐気(52%)が見られた。グレード3/4の有害事象は9人(43%)に認められ、うち高血圧が最も多く33%に認められた。主要評価項目である奏効率は未達となったが、ラムシルマブ+アテゾリズマブの併用療法は高い臨床的有用性を示し、多レジメンによる治療歴がある患者にしては全生存期間は良好であった。このレジメンはさらなる検討を要すると思われる。
感想
先行研究のLung-MAP S1800A[Reckamp KL JCO2022 PMID:35658002]の方が有名ですが面白い点もあるので取り上げました。Lung-MAP S1800Aは166人を対象にしたランダム化Ⅱ相試験で、ICIおよびプラチナ製剤を含む治療歴のある患者を、ラムシルマブ+ペムブロリズマブか何らかの抗がん剤治療に割り付けた試験です。結果は主要評価項目の全生存期間のハザード比が0.69[0.51-0.92]と有意になった研究です。今回はペムブロリズマブからアテゾリズマブに変更した単アームの試験です。奏効率は4.8%と低いものの全生存期間は16.5ヶ月と長く、このレジメンが寄与しているとすれば有望な結果と思います。Lung-MAP S1800Aのサブ解析では扁平上皮癌でPFS・OSとも利益が大きくなっており、逆に非扁平上皮ではほとんど利益が見られませんでした。今回の試験の集団は71%が非扁平上皮であり、これが成績を落とした可能性もあります。腫瘍内のCD8+T細胞の浸潤増加も確認されていますが、症例数が少なすぎて何とも言えません。個人的には、単純な指標でICIの効果は測りきれないと思っています。Fig1のwaterfallプロットも何らかの縮小効果はあるようで、普通にICI変更あるいはラムシルマブ単剤投与では起こりえない抗腫瘍効果に見えます。要するに本来期待できないものの組み合わせで効果があるのであれば選択肢が広がります。同じレジメンでの第Ⅲ相試験はないものの、レンバチニブなどマルチターゲットのTKIとICIの組み合わせによる第Ⅲ相試験は進行中のようであり、今後の報告を待ちたいと思います。