ICI治療で脳転移が出てきやすい要因とは?

Clinical risk factors for developing brain metastases during first-line (chemo-)immunotherapy in patients with non-small cell lung cancer without known baseline brain metastases.

Huijs JWJ et al.
Lung Cancer.2025 Oct ahead of print
PMID:40907070.

Abs of abs,
非小細胞肺癌には脳転移が多い。ガイドラインでは神経症状のない患者でもベースラインでのスクリーニングが推奨されるが、その有益性は未確立である。定期の画像検査は医療システムと患者に負担を強いる。免疫チェックポイント阻害剤は頭蓋内・頭蓋外奏効率が同等であり、このことは局所治療の延期およびスクリーニングの延期を正当化しうる。しかし頭蓋内外では効果の違いを生じることがあり、初回ICI治療中に新たに脳転移を診断された患者が、ベースライン(およびフォローアップ)スクリーニングから最も恩恵を受けている可能性が高い。このように初回のICI治療中の脳転移進行・発生リスクが高い患者を特定することは、スクリーニングを最適化するために極めて重要である。2018-2021年に初回治療としてICI(+化学療法)治療を受けた既知の脳転移のないIV期非小細胞肺癌患者を対象とした多施設共同後ろ向きコホート研究を行った。新規脳転移の発生率、発生時期、症状を分析し、Cox回帰分析で予測因子を特定し、ノモグラムを作成した。589例の患者において、治療中に脳転移が診断されたのは9.0%で、88.7%が1年以内に発生した。ほとんどの症例(90.6%)は症候性であった。脳転移リスク上昇を予測する4つの因子:年齢<65歳(ハザード比2.66[1.49-4.74]、T4(ハザード比2.08[1.18-3.65]、M1c(ハザード比2.19[1.22-3.94]、PD-L1<50%(ハザード比2.03[1.16-3.54])であった。ノモグラムは良好な性能を示した(C-index 0.70)。12ヶ月累積発生率は11.7%[8.5-14.9]であった。ベースライン脳転移がないIV期非小細胞肺癌において、初回免疫チェックポイント阻害剤治療中の脳転移検出率は比較的低いが、負担は大きい。同定された危険因子のある高リスク患者に脳転移検査を行うことで、低リスク患者における定期検査を回避できる可能性がある。

感想
神経症状のない患者に脳転移スクリーニングを行うかどうかはコスト、機器へのアクセスなど社会的情勢が反映されます。依然として無症状であれば脳転移評価を行なわない国もあります。この論文の出発点としては、神経学的症状がなければ脳転移スクリーニングを省略、潜在的な脳転移が初回治療に反応しないのが問題かつ症状も出るということで、そのようなことになるリスクをあらかじめ同定したら便利ではないかということです。今回同定された4つの因子は若年、T4、転移が多い、PD-L1<50%と納得できる因子でした。若年であればEGFR/ALK以外の強力なドライバー変異に支配されている可能性が上がりますし、PD-L1<50%では免疫療法に反応する可能性が下がります。これらの因子は免疫治療に関連するすべての肺癌にも共通することかも知れません。例えば抗がん剤+放射線治療後に脳転移再発することは少なからずありますし、一方で完治する可能性もあるわけです。このような患者をフォローアップする際にも参考となる情報と思います。