KEYNOTE-189試験でもペメトレキセド維持療法の意味はある

Pemetrexed maintenance with or without pembrolizumab in non-squamous non-small cell lung cancer: A cross-trial comparison of KY189 versus PARAMOUNT, PRONOUNCE, and JVBL.

Garon EB, et al.
Lung Cancer. 2020 Nov 20;151:25-29.
PMID:33285468

Abs of abs
KEYNOTE-189(KY189)試験において、非扁平上皮非小細胞肺癌におけるペムブロリズマブ+ペメトレキセド+プラチナ製剤の併用療法の有益性とリスクを明らかにする。その手段としてPARAMOUNT、PRONOUNCE、JVBLの過去の無作為試験から得られたペメトレキセド維持療法のデータと比較した。今回の比較分析において研究間の治療を調整した。まずKY189試験からペメトレキセドを5サイクル以上行った患者(ペムブロリズマブ/ペメトレキセド/プラチナ製剤、N=310、プラセボ/ペメトレキセド/プラチナ、N=135)、PARAMOUNT試験(N=359)、PRONOUNCE(N=98)、およびJVBL(N=29)から同じように抽出したデータをプールした(計486)。KY189および過去データから、無増悪生存期間(PFS)をKaplan-Meier推定およびCox比例ハザードモデルで評価した。さらに奏効およびグレード3以上の有害事象(TEAEs)を集計した。KY189において、ペメトレキセドが5サイクル以上投与集団でのPFS中央値は、ペムブロリズマブ/ペメトレキセド/プラチナ製剤群で9.3カ月、過去試験プールでのそれは、5.6ヵ月[4.6~5.8]であった(ハザード比0.53[0.42-0.68];p≦0.0001)。奏効率は、KY189のペムブロリズマブ/ペメトレキセド/プラチナで58.7%、プラセボ/ペメトレキセド/プラチナで28.9%、過去の試験プールで42.4%でした。グレード≧3のTEAEsの発生率はKY189の両群と過去試験プールと同等であった。KY189のペメトレキセド維持療法(5サイクル以上)では、ペムブロリズマブ/ペメトレキセド/プラチナ製剤はプラセボ/ペメトレキセド/プラチナ製剤と比較してPFSの改善が認められた。KY189における対照群のPFSおよび安全性プロファイルは、ペメトレキセド維持療法の過去のデータと同等であった。

感想
10年ほど前に行われた維持療法の議論を彷彿とさせる論文です。昔から肺癌を見ている方はご存じでしょうが、維持療法の試験報告を読み解くうえでのポイントの一つに「どこでランダム化されたか」があります。導入療法で奏効→ランダム化である場合、維持療法そのものの効果を見ることができますが、良い人に良いことを示すだけで、導入療法で落ちてしまった人は考慮されません。一方未治療段階でのランダム化では、たとえ同レジメンを用いたとしても導入療法の効果なのか、維持療法の効果なのか厳密には見分けられません。PARAMOUNT試験では維持療法からのランダム化、KY189試験は最初からランダム化しているので両者の単純比較は、患者背景が違いすぎるわけです。そこでKY189からある程度維持療法できた集団としてペメトレキセドを5回以上投与した患者群を取り出し、維持療法の比較をしようというのがコンセプトです。実際に単純比較の場合、KY189のコントロール群のPFS中央値4.9か月が、PARAMOUNT維持療法群(6.9か月)よりも短く、ペムブロリズマブ群のPFSが8.8ヶ月ではあるものの本当に勝ったかどうかという意地悪な議論も成り立ちます。結果はFig1がすべてです。PFSにおいて過去の維持療法のプール群よりも、KY189のペメトレキセド+プラチナ群が若干上を行き、ペムブロリズマブ群はさらに上を行っています。非常にきれいな結果ですが、あくまでも企業資金が入っているのと、結果が良くなくとも発表したデータなのかという発表/出版バイアスの可能性は捨てきれません。昔からそうですが完全にCOIの排除された議論の場というのはなく、学会でも何かのセミナーでも企業色のある場合がほとんどです。私はわずかにあったCOIを来年度からは完全になくそうと思っています。話を頼まれるとどうしても寄った話になってしまうのであまり楽しくできません。ほとんど気にせず書いている当ブログですが、今年は名実ともに「COIなし」を目指していきます。