KN-604:ペムブロリズマブ+プラチナ+エトポシドの結果、使いどころを探るべき?

Pembrolizumab or Placebo Plus Etoposide and Platinum as First-Line Therapy for Extensive-Stage Small-Cell Lung Cancer: Randomized, Double-Blind, Phase III KEYNOTE-604 Study.

Rudin CM et al.
J Clin Oncol. 2020 May 29:Online ahead of print.
PMID:32468956

Abs of abs.
小細胞肺癌に対するペムブロリズマブ単剤は抗腫瘍効果を示している。KEYNOTE-604試験はランダム化2重盲検第Ⅲ相試験で、未治療進展型小細胞肺癌に対しプラチナ+エトポシド(PE)にペムブロリズマブかプラセボかを加えて比較する試験である。適格患者は4サイクルのEP療法に加え、ペムブロリズマブかプラセボかに1:1で割り付けられ最大35サイクル投与された。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間と全生存期間である。奏効率と奏効期間は副次項目である。有効性を結論するために、片側P=0.048をPFSに、P=0.0128をOS割り振る事前設定を行った。453人のうち、228人がペムブロリズマブ+EPに、225人がプラセボ+EPに割り付けられた。ペムブロリズマブ+EPはPFSを有意に改善し(ハザード比0.75[0.61-0.91]、P=0.0023)、12ヶ月PFSは、ペムブロリズマブ+EPで13.6%、プラセボ+EPで3.1%であった。ペムブロリズマブ+ EPはOSを延長したものの、有意な水準には達しなかった(ハザード比0.80[0.64-0.98]; P=0.0164)。24ヶ月生存はそれぞれ22.5%と11.2%であった。奏効率は、ペムブロリズマブ+ EP群で70.6%、プラセボ+ EP群で61.8%であり、12か月奏功を維持している割合は、それぞれ19.3%と3.3%であった。グレード3/4の有害事象は、76.7%と74.9%、グレード5は6.3%と5.4%であり、いずれかの薬剤中断は14.8%および6.3%に見られた。
進展型小細胞肺癌に対する初回治療として、ペムブロリズマブ+EPはプラセボ+EPと比較してPFSを有意に改善した。ペムブロリズマブ+EPで予期しない毒性は見られなかった。今回のデータからペムブロリズマブの利益を支持するものと考えられる。

感想
全生存はP<0.05ですが統計学的有意とは言えなかったとの結論です。このレジメンの良し悪しを探るためサブグループ解析を見ると、脳転移あり群(n=55例)においては点推定値がプラセボ+EPに寄っています。特にペムブロリズマブ+EPが良かったのが転移臓器3個以上(n=292例)でした。広範囲の転移には良いかもしれませんが、あくまで偶然の可能性がありなんとも言えないと思います。
既出のCASPIANとIMpower133試験との比較をどうしてもしてしまいます。生存が全体的に悪いのはKN604では”sicker patients”が登録されたためとしています。これはPS1の割合が多い、腫瘍径が大きい、LDHが高いなどを根拠にするようですが、冒頭の図で示したようにコントロール群であるEP群の成績が決して悪くないことからあまり言い訳にならない気がします。もちろんある程度免疫療法の効果があることは共通しており、PFS、OSの中央値を過ぎたあたり曲線が離れてくることも見て取れます。
ここからは完全に私見ですが、ペムブロリズマブは組み合わせる薬としてやや強いのではないでしょうか。PFSは差がつくがOSで付かない薬の代表としてベバシズマブがあります。ベバシズマブは万人向けではないが患者を選んで使っていくことで利益がありそうで好き嫌いが分かれると思います。おそらく単剤での抗腫瘍活性は、組み合わせに使われたPD-1/L1阻害薬3剤の中でペムブロリズマブが一番強いと思います。奏効率が3試験の中で一番高いのもベバシズマブと似たものを感じます。またPFSは早くから別れ、PD率も最も低いです。そのためベバシズマブのようにペムブロリズマブ+EPは対象集団をしっかりと見極めなくてはならないのでしょう。仮にペムブロリズマブ+EPが承認となれば、使いどころを探る価値があるかもしれません。