KY189の長期安全性:特に腎障害と肺障害

Safety of pemetrexed plus platinum in combination with pembrolizumab for metastatic nonsquamous non-small cell lung cancer: A post hoc analysis of KEYNOTE-189.

Garon EB et al.
Lung Cancer. 2021 May;155:53-60.
PMID:33730652.

Abs of abs,
今回の事後解析では、ペメトレキセド+プラチナ製剤+ペンブロリズマブ併用療法の安全性について、全グレードおよびグレード3以上の有害事象、および腎関連の有害事象の発症までの期間と回復までの期間を評価した。KEYNOTE-189の患者データを、治療集団ごと(ペムブロリズマブ群、n=405、プラセボ群、n=202)と、ペメトレキセドを5サイクル以上投与された患者(ペメトレキセド/ペムブロリズマブ/プラチナ群、n=310、ペメトレキセド/プラセボ/プラチナ群、n=135)で解析した。有害事象は、すでに報告されているKEYNOTE-189のデータから発生率が2%以上のものを選択した。内容は好中球減少、発熱性好中球減少、貧血、血小板減少、脱力感、疲労感、呼吸困難感、下痢、悪心、嘔吐、肺炎、腎障害などである。全有害事象は並べたまとめとした。発症までの時間と回復までの時間については,中央値と四分位範囲を用いて検討した。両治療群において、発生率2%以上の非血液学的(悪心、嘔吐、下痢、脱力感)および血液学的(発熱性好中球減少、血小板減少、好中球減少)グレード3以上のAEのほとんどは、発症までの時間(中央値)が最初の4サイクル以内であり、発症から回復までの時間(中央値)が2週間以内であった。少数のAEは、発症までの時間(中央値)が長く(肺臓炎、疲労感)、消失までの時間(中央値)が長かった(肺炎、疲労、急性腎障害、貧血)。ペメトレキセドを5サイクル以上投与された患者のうち、ペメトレキセド/ペムブロリズマブ/プラチナ製剤群における全グレードの腎毒性の発生率は、1~4サイクル目で2.3%、5~8サイクル目で4.8%、9~12サイクル目で2.6%でした。 また、ペメトレキセド/プラセボ/プラチナ製剤群では、1-4サイクルで0.7%、5-8サイクルで1.5%、9-12サイクルで1.3%、13サイクル以上で2.0%であった。ペメトレキセド/ペムブロリズマブ/プラチナ製剤は、治療期間が長くなっても毒性は管理可能である。腎毒性の発生率は、ペメトレキセドと比較してペンブロリズマブ併用療法でわずかに高かったが、その発生率は治療サイクルを重ねても増加しなかった。この結果は、KEYNOTE-189レジメンが実地臨床で安全に使用できることを支持する。

感想
現在頻用されているKEYNOTE-189レジメンについて長期有害事象のデータです。覚えておくべきことは「長期に問題となる有害事象は肺臓炎と腎障害である」ことと「この有害事象はペムブロリズマブを抜いた場合でも大して変わらない」ということです。例えば3剤併用における5~8サイクル目で腎障害が4.8%、2剤併用では1.5%です。これを週刊誌の見出しなら「3倍」とあおるところでしょうが、軽度のものも含めた全グレードの腎障害であり死亡ではありません。したがって実地臨床での絶対値としての大差はないだろうと見ています。現在私もこのレジメンを多く使用していますが、導入時に懸念した有害事象にあまり遭遇せず慣れて使用できています。正にKEYNOTE-189レジメン一人勝ちの状態ですが、化学療法+ニボルマブ+イピリムマブや、化学療法+アテゾリズマブ+ベバシズマブなど代替候補はいくつか出てきています。直接比較の臨床試験も行われています。目下の懸念は肺臓炎を起こした場合にCovid19の否定が明確にはできないということです。私の施設でも外来抗がん剤治療中にCovid陽性あるいは濃厚接触者が出ています。外来化学療法で毎回治療前にPCRというわけにもいかず、例えばPCR陰性だが濃厚接触者の同居家族など、どこまで治療を延期すべきか判断に迷うケースが出始めており神経質になっています。