N2非小細胞肺癌、治療選択に迷う部分が大きい

A prospective analysis of the management practices for patients with Stage-III-N2Non-Small-Cell lung cancer (OBSERVE IIIA-B GFPC 04-2020Study).

Jacob M et al.
Lung Cancer. 2024 Epub 2024 Jul 11.
PMID:39003937.

Abs of abs,
Ⅲ期-N2の非小細胞肺癌(NSCLC)に対する各種治療法(手術療法または放射線療法と全身薬物療法の併用)の選択は依然として議論の余地がある。 患者は根治を意図して治療され、現在までのデータでは完全切除後の生存期間が延長することを示している。 しかし「腫瘍の切除可能性」についての合意された定義は存在しない。 本研究は、Ⅲ期‐N2 症例に対する各施設でのカンファレンスで決定された治療方針の一致度を分析することを目的とした。方法として大学病院で議論されたⅢ期-N2患者6人を選び、各施設のカンファレンスで議論した。 この多施設前向き観察研究の目的は、各症例に対する決定の一貫性を評価することであった。 副次目的としては、意思決定に影響を及ぼす可能性のある背景を明らかにすることであった。本研究には、大学病院、がんセンター、総合病院、私立病院の27団体が参加した。 6症例に対する治療決定はいずれも一致しなかった。決定は3症例では均一であり(それぞれ78%、85%、88%が内科治療を選択)、他の3症例では分かれていた(内科的治療と外科治療は、それぞれ44%/56%、46%/54%、58%/42%)。 興味深いことに、内科治療と外科治療における化学放射線療法と周術期化学療法に関する決定もそれぞれ不一致であった。 病院のタイプ、カンファレンスへの専門医の参加、および活動度は、治療上の決定と有意な関連はなかった。本研究では、Ⅲ期‐N2症例の治療管理に関する施設間格差が目立った。 決定は局所的な条件とも関連が見られなかった。

感想
縦隔リンパ節転移を有するⅢ期の非小細胞肺癌の治療方針決定は確かに悩ましいです。1つの縦隔リンパ節転移は手術でよいですが、隣接した2つならどうか?またPETで境界域のSUVを示した場合どうか、一つだがかなり離れている場合はどうかなど議論が絶えません。化学放射線療法の臨床試験では「切除不能の定義」をするのが大変で、微妙なケースでは患者希望なども重要な因子ですので、単純に範囲の問題でもありません。最近は術前治療あるいは術後補助化学療法にドライバー変異も絡みさらに複雑になっています。症例は6人分検討されています。内科治療が一番多かった症例2はどんなものかと言うと、75歳男性、PS0、腺癌、虚血性心疾患と慢性腎不全があり、画像上4R(28㎜)と7(13㎜)にリンパ節転移があり、EBUSで4Rに腫瘍細胞が証明されています。ドライバー変異はありません。リンパ節が大きい場合はやはり手術は避けられるようです。意見が分かれている症例5は、53歳男性、PS0、腺癌、縦隔鏡で4Rと7にリンパ説転移が証明されEGFR遺伝子変異陽性(19DEL)の症例です。術後補助化学療法としてのオシメルチニブ治療が確立しているから手術するという考え方も合理的ですし、オシメルチニブの効果が高いことから抗がん剤で通すのも一理あります。またLAURA試験の結果から化学放射線療法後にオシメルチニブも今後十分選択肢になりえると思います。今回画像は提示されていないので議論に限界があります。経験、専門医の参加といった因子もあまり統一した意思決定に寄与していないとことも面白いところで、知識が豊富になるとますます迷うの典型ではないかと思います。