NEJ009 全生存期間の評価は?

Gefitinib Alone Versus Gefitinib Plus Chemotherapy for Non-Small-Cell Lung Cancer With Mutated Epidermal Growth Factor Receptor: NEJ009 Study.

Hosomi Y
J Clin Oncol. 2019 Nov 4: [Epub ahead of print]
PMID:31682542

Abs of abs.
EGFR-TKIと殺細胞性抗がん剤の併用の効果が高いことが知られている。しかしEGFR-TKI単独と比較した場合の効果と安全性については十分検討されていない。今回はEGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌においてゲフィチニブとゲフィチニブ+カルボプラチン+ペメトレキセドを、ランダムに345人を割り付けた。プライマリーエンドポイントは、階層別逐次評価法を用いた無増悪生存期間(PFS)、PFS2と全生存期間である。副次項目として奏効率、安全性、QOLとした。併用療法は奏効率(84% vs 67%:P<0.01)、PFS(20.9ヶ月 vs 11.9ヶ月 ハザード比0.490;P<0.001)は良好であったが、PFS2(20.9ヶ月 vs 18.0ヶ月 ハザード比0.722; P=0.021)は有意差を見出せなかった。グレード3以上の血液毒性といった治療関連有害事象は併用療法で多く見られた(65.3% vs 31.0%)が、QOLに差はなかった。併用群で治療関連死が1例見られた。今回の試験では、ゲフィチニブ単剤と比較しカルボプラチン+ペメトレキセドを加えることでPFSを改善し、毒性も許容できるものであった。全生存期間は更なる評価が求められる。

感想
全生存期間について併用群50.9ヶ月、ゲフィチニブ群38.8ヶ月(ハザード比0.72[0.55-0.95])でP=0.021ですが統計設定上は有意差とは取らないようです。しかし以前取り上げた別の試験でも有意差が見られており、かつサブグループ解析でもすべて同じ傾向であり、扱いとしては併用群が勝っているものと考えています。PFS評価について難しい問題があったと書かれています。ゲフィチニブ→プラチナ2剤の場合、2つのPFSを足せば、同時併用のPFSと比較できそうに見えます。しかしその間にゲフィチニブPD後もbeyondで引っ張るという期間が含まれてしまいます。今回は最終的にそれを除くことでPFS2を評価していますが、この引き算はそんなに簡単ではないと想像します。このような扱いにくい数字が含まれていることを踏まえた上でPFSを見ていく必要があります。Beyond部分を除外したTKIとプラチナ2剤の同時併用と逐次療法のPFS比較はFig1Bになります。ほぼ同等ですが若干同時併用が上を行っています。これまでも有効な薬は別々に使うより同時の方が効果が高いと言われており、それが出ているように見えます。またゲフィチニブ、プラチナ2剤を共に使い終えた後の生存曲線(FigA4B)でも差が見られていることから、同時併用が良好であること伺えます。
さて他の要因として、プラチナ2剤が確実に入るかも重要な点です。今回ゲフィチニブの後にプラチナ投与ができたのは77.4%あり、実地よりはかなり良いデータです。しかしドセタキセル(+ラムシルマブ)まで入っているのは、ゲフィチニブ群で30.8%、併用群で42.9%とわずかですが差があるように見えます。オシメルチニブはゲフィチニブ群23.3%、併用群21.8%と大差ありません。しかしオシメルチニブが使えた、つまりT790M陽性群についての生存曲線は驚異的です(FigA5)。T790Mは狙って出せるものではないので、現時点では2次治療以降でドセタキセル±ラムシルマブも、エビデンス通りきちんと使用ことを改めて意識する必要があります。
さてこの研究はゲフィチニブ群のOSをNEJ002の成績から27ヶ月と見込んで行っています。しかし実際のOSは38.8ヶ月と大幅に伸びています。両試験で年齢中央値もほとんど変わりません。免疫療法のためとも思えませんが、この差はどこから由来するのでしょうか。治療と管理が全体的に良くなっていることもあるでしょう。先ごろFLAURA試験でのオシメルチニブの全生存期間が38.6ヶ月と報告され、またコントロール群(ゲフィチニブ、エルロチニブ)は31.8ヶ月でした。世界的にみるとあまり周辺の進歩はないのかも知れません。EGFR遺伝子変異陽性例の初回治療は、現在オシメルチニブ一色ですが、このレジメンももう少し評価されてもいいのではないでしょうか。機会があれば是非とも使ってみたいと思っています。同様の意見の先生はいらっしゃいますでしょうか?