PD-L1超高発現でも化学療法併用が良い?

Real-world comparison of pembrolizumab alone and combined with chemotherapy in metastatic lung adenocarcinoma patients with PD-L1 expression ≥50.

Hektoen HH et al.
ESMO Open. 2025 Apr29;10(5):105073.
PMID:40305908.

Abs of abs,
PD-L1高発現(50%以上)の進行肺腺癌の初回治療には、免疫チェックポイント阻害薬単独あるいは化学療法との併用がある。この状況での化学療法の追加利益があるかどうかの直接比較が欠けている。今回は実臨床において、この2つの治療手段を全体とサブグループ内で比較することを目的とした。今回の後ろ向き研究は、2017年から2021年にノルウェーで診断されたⅣ期非小細胞肺腺癌、PD-L1発現≧50%、ペムブロリズマブによる初回治療を単独療法(n=317)かプラチナ製剤ベースの化学療法との併用(n=93)で受けた410人を対象とした。性別、年齢、病期、PD-L1発現、PS、学歴で調整し層別化したCox回帰を用いて、治療開始後の早期死亡リスク(6ヵ月)と全死亡リスク(3年)を解析した。併用療法は、単剤療法と比較して全生存期間中央値が延長(22.6ヵ月対14.2ヵ月)していたが、調整後では統計学的に有意ではなかった(ハザード比0.74[0.54-1.00])。早期死亡のリスクは、調整後でも併用療法を受けた患者で有意に低かった(ハザード比0.41[0.23-0.76])。多くのサブグループで併用療法が同等かそれ以上の生存アウトカムを示した。特に女性、IVB期、PD-L1=75%超において、併用療法の有益性見られた。今回の結果はPD-L1高発現においてICIと化学療法の併用療法が単剤療法よりも優れた生存利益を示した。特定のサブグループではさらに強調されていた。さらに単剤療法と併用療法の患者選択を最適化するためにはPD-L1の役割を含めた、更なる検証が必要である。

感想
PD-L1高発現群に対する初回治療はまだ論争中で様々な論点を含んでいます。仮に直接比較試験あったとしても結論は出せないと思います。つまり何%以上を高発現とするのか、TMBは考えなくてよいのか、年齢による区切りをつけるのか、併用レジメンは何がベストなのかなど、どんな結果であっても完全解決とは行かないでしょう。今回の研究は、傾向スコアで重み付けをしない素のデータ比較、PD-L1=75%とある程度症例数(250ほど)が確保できた超高発現群でのデータを見せている点が評価できます。
全体としては化学療法併用の方がOS良好、ただし若年者、PS良好に偏るといった相変わらずの結果です。Fig2-cではPD-L1=50-75%と75%以上の比較がなされ、同じような幅でOSが開いています、つまり化学療法併用が良好ということです。面白いのは性別で、女性の併用が良くて、それ以外は同じようなOSになっています。これはICIというより抗がん剤併用(なにかは詳述されていませんが)の利益、ペメトレキセドの利益を女性の方が受けやすいとも考えられると思います。類似した研究は多くありますが、PD-L1高発現であっても化学療法併用で良いとする状況証拠となる研究だと感じました。