PD-L1染色はセルブロックでも評価できるか

Impact of Specimen Characteristics on PD-L1 Testing in Non-Small Cell Lung Cancer: Validation of the IASLC PD-L1 Testing Recommendations.

Gagné A et al.
J Thorac Oncol. 2019 Dec;14(12):2062-2070.
PMID: 31494258

Abs of abs.
PD-L1を標的とした治療は非小細胞肺癌治療に革命をもたらした。しかしPD-L1染色スコア(TPS)だけが承認された唯一のバイオマーカーである。IASLCによれば、腫瘍細胞100未満あるいは3年以上経過した検体は信頼性に欠けるので使うべきではないとされ、セルブロック検体の信頼性は確認されていない。今回は2016年から2017年にかけてPD-L1(22C3)検査を行った連続1249例について解析した。適正とは言えない条件(100未満の腫瘍細胞、3年以上経過した検体、セルブロック)とTPSとの関連を調べ、多項ロジスティック解析を行った。35.5%が何らかの適正とは言えない条件で測定されていた。TPS50%以上の集団において、腫瘍細胞100個以上のものが有意に高い可能性を示していた(オッズ比1.97、P=0.008)。また30日以内の検体か、3年以上経過した検体かの比較においても同じ可能性を示した(オッズ比2.46、P=0.023)。セルブロックと他の検体との間には差は見られなかった(生検オッズ比0.99、外科検体0.73)。今回の結果から、100個未満の腫瘍細胞の検体、3年以上経過した検体ではPD-L1が過小評価されている場合があることが示唆された。セルブロックに関しては、この結果の信頼性支持する新たな知見となるが、追加研究が必要である。

感想
TPS測定に提出する検体として、腫瘍細胞100個以上、古い検体は出さないという条件があります。しかし進行癌で小さい気管支鏡検体しかない、あるいは胸水例で穿刺排液のセルブロックしかないということに良く遭遇します。その場合多少条件が不十分でも提出せざるを得ないケースがあります。その際の信頼性はどう変化するのかということを知っておく必要があります。結論としてはセルブロックはある程度信頼性があるようです。これはいくつか既報があり、おおむね同じ結果です[Ilie M CancerCytop2018 PMID:29411536][Noll B CancerCytop2018 PMID:29499101]。ただ原発と転移では元々PD-L1発現に相違があるよう[Mansfield AS AnnOncol2016 PMID:27502709]で、改めて取り直したセルブロックあるいは腫瘍量の足りない検体の解釈は困難です。そもそもPD-L1発現がEGFR遺伝子変異のように有り無しで分けられるものでなく、刺激で変動している可能性もあり「真のPD-L1値」は、幅をもってとらえるべきもので、唯一の値として存在するものではないと思います。ただ既報にある通り[Boothman AM JTO2019 PMID:31063864]経年劣化は今回も示されています。同じサンプルを毎年PD-L1染色し、多数で経年劣化を記録していけば、経年を考慮した推定式が立てられると思いますが、どこかが報告してくれないものかと思います。