オシメルチニブ耐性化後のアミバンタマブ+TKI+化学療法:MARIPOSA-2 study

Amivantamab plus chemotherapy with and without lazertinib in EGFR-mutant advanced NSCLC after disease progression on osimertinib: primary results from the phase Ⅲ MARIPOSA-2 study.

Passaro A et al.
Ann Oncol. 2024 Jan;35(1):77-90.
PMID:37879444.

Abs of abs.
治療抵抗性のEGFR遺伝子変異陽性肺癌に対する第I相試験において、アミバンタマブとカルボプラチン-ペメトレキセド(化学療法)とラザルチニブの併用療法は、抗腫瘍効果を示した。今回はこの組み合わせを国際共同第Ⅲ相試験で評価した。オシメルチニブで病勢進行後のEGFR遺伝子変異陽性(19DelまたはL858R)患者657人を、アミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法、化学療法、アミバンタマブ-化学療法を受ける群に2:2:1で無作為に割り付けた。主要評価項目として、アミバンタマブ-化学療法とアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法のPFSを化学療法と比較した。試験途中で、アミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法群で血液毒性があれば、カルボプラチン投与後にラザルチニブを開始するレジメンに変更された。患者背景は、脳転移歴や脳放射線照射歴を含め、3群間で偏りはなかった。化学療法とのPFS比較はアミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法で有意に延長していた(ハザード比0.48および0.44;いずれもP<0.001;中央値はそれぞれ6.3カ月および8.3カ月対4.2カ月)。主治医評価でも一貫してPFS結果が認められた(ハザード比は、アミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法でそれぞれ0.41および0.38;両者ともP<0.001;中央値はそれぞれ8.2ヵ月および8.3ヵ月対4.2ヵ月)。奏効率も、化学療法に対してアミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法で有意に上昇した(64%および63%対36%;両者ともP<0.001)。頭蓋内PFS中央値は、アミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法と化学療法の比較で、それぞれ12.5ヵ月および12.8ヵ月対8.3ヵ月であった(ハザード比0.55および0.58)。アミバンタマブを含むレジメンにおける主な有害事象は、血液毒性、EGFR関連毒性、MET関連の毒性であった。アミバンタマブ-化学療法はアミバンタマブ-ラザルチニブ化学療法よりも血液有害事象の発生率が低かった。アミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法は、オシメルチニブで病勢進行した後の限られた選択肢のなかで、化学療法と比較してPFSおよび頭蓋内PFSを改善した。修正アミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法レジメンについては、より長期のフォローアップが必要である。

感想
ラザルチニブは第三世代EGFR-TKIです。単剤でのオシメルチニブとの直接比較はないようですが、初回治療におけるゲフィチニブとの第Ⅲ相比較試験[Cho BC JCO2023 PMID:37379502]では、PFS20.6ヶ月対9.7ヶ月、ハザード比0.45と効果においてオシメルチニブに劣ることはないと考えられます。アミバンタマブはEGFR-MET 二重特異抗体で、Exon20insに対する有効性が有名です。オシメルチニブ耐性化にはさまざまな機序がありますが、MET変異は重要経路の一つです。EGFR-TKIのbeyond-PD投与を臨床試験として明確に生存アウトカム改善を示したものはないですが、実地としてはかなり行われています。したがってTKIを継続しつつ抗がん剤を上乗せ、さらにMET阻害も狙うのは、毒性さえ許容できれば合理的です。毒性増強として試験途中で3剤併用に血栓症が多発し抗凝固薬の使用が推奨されました。
今回のプライマリーエンドポイントはアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法対化学療法とアミバンタマブ-化学療法対化学療法のPFSですが、タイプⅠエラー制御のためそこを起点として複雑にαが振られています。図にしたものはプロトコールの345/392にあります。ここ最近第Ⅲ相で使われるようになったαのリサイクルを行い、アミバンタマブ-化学療法およびアミバンタマブ-ラザルチニブ-化学療法の有用性をPFS、奏効率、OSの計6点を証明しようとしています。この論法で行くと、現在までPFSと奏効率は4つの比較ですべてP<0.001なのでαはすべてリサイクルされ、OSも結局はそれぞれα0.02と0.03で判定されるのでしょうか。これに中間解析での分割が絡むとさらに複雑になります。今回はOSがまだ未成熟で続報を待つことになります。見た目にはあまり差がなさそうです。
PFSについてFig1を見ると、アミバンタマブ+化学療法の意義は十分にあるように見えますが、ラザルチニブの上乗せ効果はあまり大きくないように見えます。サブグループ解析を見ると19Delの方がL858Rと比べてラザルチニブの上乗せ効果がありそうに見えます(Fig2)。肝心の毒性ですが、前述の血栓症以外に目新しいものはありません。しかし最後の投与から30日以内の死亡は、アミバンタマブ-化学療法、アミバンタマブ- ラゼルチニブ-化学療法、化学療法でそれぞれ5%、10%、3%ありました。これをどう考えるかですが、現在ラザルチニブが国内承認を得ていないことと、Ex20insに対してすでにアミバンタマブが申請中であることから。アミバンタマブ+化学療法だけが先に認可されるかも知れません。