RET陽性肺癌の特徴、末梢発生、リンパ節転移に乏しいのに胸膜播種がある

Characterization of Computed Tomography Imaging of Rearranged During Transfection-rearranged Lung Cancer.

Saiki M et al.
Clin Lung Cancer. 2018 Sep;19(5):435-440.
PMID:29885946

Abs of abs.
RET融合遺伝子陽性非小細胞肺癌は比較的稀であり、臨床背景あるいは画像での特徴は十分に解明されていない。今回は進行肺癌かつRET陽性である患者で治療した患者の臨床背景、CT画像での特徴を解析した。進行RET陽性非小細胞肺癌患者21例を、FISHおよび/またはRT-PCRを用いてRET再編成を同定した。融合パートナー遺伝子は、KIF5B(57%)、CCDC6(19%)、および不明(24%)であった。CTでは、原発巣と思われる12例(92%)が末梢にあり、すべてがすりガラス陰影を伴わず、エアブロンコグラムもなく、空洞形成もない固形腫瘍であった。原発径中央値は30mm[12-63mm]であった。初回化学療法前のCT画像がある18人の患者のうち、12人(67%)のリンパ節腫脹を認めなかった。遠隔転移は、胸膜播種(72%)、肺内転移(56%)、骨転移(44%)また2例に脳転移(11%)を認めた。本研究では進行したRET陽性非小細胞肺癌は、リンパ節腫脹の有無にかかわらず、比較的小さく、末梢に位置する固形腫瘍を原発として出現しており、胸膜播種が頻繁に見られた。

感想
RET陽性は腺癌の1%程度に見られるとされ、ALK陽性と似たような臨床背景と言われています。今回は60歳以上が12例(57%)あり、女性がやや多く、喫煙者も半数に見られました。融合の相手となる遺伝子変異はKIF5Bが最も多く従来報告と一致していました。ALK陽性の画像での特徴は47人のALK陽性と対照群とを比較した報告[Yamamoto S Radiology2014 PMID:24885982]では、中枢近くに位置する、胸膜巻き込み象に乏しい、胸水が多いという内容でした。ついでにEGFR遺伝子変異陽性をおさらいします。103人のEGFR遺伝子変異陽性例と非保持例を比較した報告[Hasegawa M JTO2016 PMID:26917231]では、多発肺内転移、収束像、すりガラス陰影、ノッチがEGFR遺伝子変異陽性が持つ所見とし、陰性所見として空洞形成、胸水を挙げています。今回の検討で脳転移は2例と少数でした。RET陽性での脳転移の頻度について最新の報告[Drilon A JTO2018 PMID:30017832]では、診断時Ⅳ期のベースラインで25%と高率で、さらに経過中半数に脳転移の出現が見られるとされています。治療についてはバンデタニブなど分子標的治療が模索されていますが、ペメトレキセドの有効性も報告されています[Drilon A AnnOncol2016 PMID:27056998]。今回の論文から、同じドライバー変異でも比較的末梢孤発性、リンパ節転移に乏しいのに胸膜播種があるといった症例で、RET陽性を疑っても良さそうです。