Clinical treatment patterns,molecular characteristics and survival outcomes of ROS1-rearranged non-small cell lung cancer: A large multicenter retrospective study.
Huang Z et al.
Lung Cancer. 2024 Jun;192:
PMID:38795459.
Abs of abs.
ROS1変異を有する非小細胞肺癌は、化学療法よりもTKI治療に良好な反応を示す。本研究では、ROS1変異の実地診療での治療パターンと生存アウトカムを調査した。2018年8月から2022年3月までに中国の4つの病院で治療を受けたROS1変異陽性非小細胞肺癌に対する後ろ向き研究を行った。遺伝子変異分布、耐性パターン、生存アウトカムを解析した。ROS1変異は、研究コホートの1.8%(550/31225)に見られた。CD74は最も一般的なROS1融合パートナーであり、45.8%を占めた。初回治療では73.9%の患者にクリゾチニブが使用され、二次治療では化学療法、セリチニブ、ロルラチニブの使用が多くなった。初回治療で最も多かった進行部位は肺(43.2%)と脳(27.6%)であり、二次治療で最も多かった進行部位は脳(39.2%)であった。生存期間中央値は46カ月[39.6-52.4]であった。初回治療としてクリゾチニブを使用した場合、無増悪生存期間(18.5対6.0;p<0.001)および全生存期間(49.8対37;p=0.024)において、化学療法を上回る生存アウトカムを発揮した。後治療法の違いも生存に影響を及ぼし、化学療法→TKIよりも、クリゾチニブ→TKIを行った方がアウトカムは良好であった。今回の研究は、ROS1変異患者の実地治療、薬剤耐性パターン、生存アウトカムに関する洞察を提供した。今回の解析はこのサブセットの貴重な資料となる。
感想
後ろ向きとは言え550例を集めた研究で、価値あるものです。引用にもある通り、クリゾチニブのPFSは19.2ヵ月、OSは51.4ヵ月で肺癌の中ではかなり予後良好です。問題は実地でも同じようなデータになっているかの確認と、2次治療とのシークエンスの可能性を探ることです。2023年版の日本の肺癌学会ガイドラインでは、初回治療のクリゾチニブかエヌトレクチニブを推奨していますが、2次治療以降についての言及はありません。生存期間はCrizo→TKI>Chemo→TKI>Crizo→Chemo、59.9ヵ月、45.0ヵ月、30ヵ月となっており、TKI→TKIのシークエンスが最も予後良好であった点が最も重視すべきと思います(Fig5)。これは傾向スコアマッチングでも確認されています。クリゾチニブの次にエヌトレクチニブあるいはロルラチニブがおそらく良いのでしょうが、ROS1へのロルラチニブは日本での適応は通っていません。ご存じの通りTKI→TKIのシークエンスはALK陽性肺癌でも推奨されており、EGFR遺伝子変異とは違うところです。ROS1は融合遺伝子で、融合相手(パートナー)によって予後が変わるかも興味深いところですが、最も多いCD74とそれ以外で特に差はないようです。またTP53との併存も予後をかなり悪くします(補遺TableS1)。ここではTP53併存の28例がまとめられており、単純平均でPFS8.35ヵ月、OS22.5ヵ月でした。このように補遺まで含めるとかなり豊富なデータであり、今後のROS1肺癌の比較検討対象として貴重な報告です。