subsolid nodleはそこからの発癌より、他からの肺癌発生を心配すべき状態を意味する

Long-Term Active Surveillance of Screening Detected Subsolid Nodules is a Safe Strategy to Reduce Overtreatment.

Silva M et al.
J Thorac Oncol. 2018 Oct;13(10):1454-1463.
PMID: 30026071

Abs of abs.
subsolid nodule(SSN)として発症する肺癌は増大が遅いことがある。それゆえSSNの治療には議論の余地がある。今回の研究目的は肺癌検診において、すぐ切除されなかったSSNについて長期予後をみることにある。2005年より多施設でのイタリア肺検診試験では、早期切除と違って、継続的に存在するSSNに対する積極的なサーベイランスを実施している。SSNの存在は、SSNのある部位での癌診断、肺以外の他の部位の癌診断と関連していた。全死亡と肺癌死亡のリスクは、Cox比例ハザードモデルによって解析した。SSNは、受診者の16.9%(2309人中389人)に認められた。9.3±1.2年のフォローアップ期間中、SSNを有する患者が肺癌診断されるハザード比は6.77[3.39-13.54]であったが、73%(30/22)の癌はSSN以外のところから発生していた(SSN発見から癌診断までの時間の中央値は52ヶ月)。肺結節のない者と比較して、SSNを有する患者の肺癌に限った死亡は有意に増加した(ハザード比3.80[1.24-11.65])。SSNに起因する肺癌は追跡期間内に死に至ることはなかった。今回のコホートからの結論として、SSNを有する患者は、肺の他の場所で肺癌を発症するリスクが高く、SSNからの発症は稀であり、死亡に至ることはなかった。この結果は固形部分の増大を示すSSNに対する従来型の管理と、積極的なサーベイランスの安全性を示すものであり、一方で他癌発症のリスクが高いためフォローアップ期間を延ばす必要性を示すものである。

感想
この研究の元試験はイタリアで49-75歳かつ20pack-years以上の重喫煙者を対象に行われた低線量CTでの検診のランダム化試験です(Early Lung Cancer Detection in High Risk Individuals (MILD):NCT02837809)。この研究からはさまざまな知見が報告されており、例えば検診発見した小細胞肺癌で予後は改善しない[Silva M JTO2016 PMID:26845115]などがあり、今回もその一部となります。
検診は低線量CTをベースライン、2年後、4年後と見ていき、コンピューター支援も得て結節を同定します。今回はそこで見つけたSSNがどうなったかを見ています。結節は肺癌とされるのに最終的に10年くらい経って診断されています。プロトコールでは固形部分が5㎜以下の場合、非固形部分のサイズに関係なくアクティブサーベイランス(毎年CT)になります。固形部分が5㎜以上であればvolume doubling timeを計算し、PET(SUV1.5を目安)や生検を考慮し外科切除を検討します。これらの検査でわからなければアクティブサーベイランスで見ていきます。スクリーニングを受けた55.5%に何らかの結節が見つかっています。ここで大事なのは目で見るより多くの診断がコンピュータ支援によりなされています(SSNの57.6%がコンピュータ支援だけで見つかっている)。私は検診に従事していないので、日本の現状をよく知りませんが、もはやCT検診画像を人間の目に頼って判定する時代ではないということです。もちろんコンピュータで見つけたSSNが肺癌である確率は有意に低いです。切除されたSSNは中央値で77ヶ月間のフォローアップを受けていました。にもかかわらず、これらのほとんどがⅠ期でした。今回の研究の一番の知見はSSNが見つかった領域以外の領域で癌が見つかる点です(26.7%対73.3%)。これらの癌は中央値で52ヶ月のフォローアップで出現し、切除可能例が多いものの進行期もありました。またSSNがあるものは13.6%に肺外の癌が見つかっています。これらを総合して生存期間を見ると、SSNが癌と判明したものは全く死亡せず、SSN以外から肺癌が発生したものが最も予後不良、ついで肺外の癌が見つかったものが予後不良となっています(Fig2)。したがって、SSNの存在自体が発癌リスクの指標とみなすことができます。おそらくは喫煙の影響が大きいと思われますが、SSNが見つかった場合、肺以外の癌も心配しながらフォローアップする必要があるでしょう。著者らはこれらのSSNがある患者が、予防の臨床試験に適した集団である可能性があると指摘しています。まったく同感です。喫煙者で肺癌や咽頭癌、食道癌などの重複癌があることは時々経験します。したがって効率化の面でもこのような指標があると検診結果も見えてきやすいと考えられます。