Phase Ⅲ, Randomized Study of Atezolizumab Plus Bevacizumab and Chemotherapy in Patients With EGFR- or ALK-Mutated Non-Small-Cell Lung Cancer (ATTLAS, KCSG-LU19-04).
Park S et al.
J Clin Oncol. 2024 Apr 10;42(11):1241-1251.
PMID: 37861993.
Abs of abs.
ドライバー変異を有する非小細胞肺癌の治療において、TKI後の抗PD-(L)1抗体の役割は不明である。今回の無作為化非盲検多施設共同第Ⅲ相試験では、TKI治療後に進行したEGFR/ALK変異陽性非小細胞肺癌を対象に、アテゾリズマブとベバシズマブ、パクリタキセル、カルボプラチンの併用療法(ABCP)の有効性を評価した。ABCP療法後にアテゾリズマブ+ベバシズマブによる維持療法を行った場合と、ペメトレキセド+カルボプラチンまたはシスプラチン療法後にペメトレキセドによる維持療法を行った場合の効果を比較した。主要評価項目は無増悪生存期間とした。韓国の16施設からEGFR遺伝子変異(n=215)またはALK転座(n=13)を有する患者228人が登録され、ABCP群(n=154)またはPC群(n=74)に2:1の割合で無作為に割り付けられた。追跡期間中央値は26.1ヵ月[24.7-28.2]であった。奏効率(69.5%対41.9%、P < 0.001)およびPFS中央値(8.48カ月対5.62カ月、ハザード比0.62[0.45-0.86];P=0.004)は、PC群よりもABCP群で有意に良好であった。PFSの利益はPD-L1発現が増加するにつれて増加し、PD-L1が1%以上、10%以上、50%以上の場合ハザード比はそれぞれ0.47、0.41、0.24となった。全生存期間はABCP群とPC群で同等であった(20.63カ月 vs 20.27カ月、ハザード比1.01[0.69-1.46]; P=0.975)。ABCP群の安全性は既報と変わりなかったが、有害事象はPC群と比較して多かった。本試験は、分子標的治療で進行したEGFR/ALK変異陽性非小細胞肺癌を対象に、抗PD-L1抗体とベバシズマブおよび化学療法との併用療法の有用性を証明した最初の無作為化第Ⅲ相試験である。
感想
これまでいくつかEGFR/ALK-TKI治療後の免疫療法のデータが出ています。初めに出たのはIMpower150のサブ解析で、免疫複合療法の有意性が推測される結果でしたが、症例数が少なく、またその証明を目的とした試験ではないため結論は出ませんでした。その後第Ⅲ相としてCheckMate-722、KEYNOTE-789が報告されていますが、統計学的有意性を示せませんでした。ORIENT-31[Lu S LancetRespMed2023 PMID:37156249]は先にPFSの優越性を証明しています。日本からは単群第Ⅱ相試験が報告されています[Watanabe S EurJCan2024 PMID:38061214]。データを眺めると、PFSは差がついていますが、OSはまったく差が付いていません。IMpower150を起点にしているので仕方ないですが、レジメンも単なるBEV+ICIの上乗せになっていないところも残念です。意地悪な見方をすればまったく別レジメンを比較しているわけで、純粋に併用療法の有効性を証明したわけではないとも強弁できます。PFSのサブグループ解析を見ると、脳転移で有効性があり、T790M陽性では有効性がなくなっています。前者はBEVの効果とも考えられ、後者はドライバー変異依存が強い場合はICIが関係なくなってしまうということかも知れません。その他、男性、喫煙者といったICIに有利そうな因子はやはり有利に働いており、EGFR/ALK陽性と言えどもある程度ICIの効果を反映しているように見えます。補遺でのOSのサブグループ解析は、全体で差がないことからあまり見るべきものはないですが、あえて言えば喫煙者、PD-L1>=50%以上での有効性が目立ちます。裏を返せばこれらはTKIが効きにくい因子です。今回のデータも含めてですが、現時点で私はEGFR-TKIが標準より短い期間しか奏効しなかった場合(第1,2世代なら12か月、第3世代なら18か月)に、ABPC療法を試す候補とすることを考えています。保守的ですが、TKI後の標準治療は未だ免疫療法を含まない従来の化学療法であり、毒性も強いことからABCP療法はオプションの一つに過ぎないと考えています。