TPS<1%に対するKEYNOTE-189の長期成績

Pembrolizumab Plus Chemotherapy for Metastatic NSCLC With Programmed Cell Death Ligand 1 Tumor Proportion Score Less Than 1%: Pooled Analysis of Outcomes After Five Years of Follow-Up.

Gadgeel SM
J Thorac Oncol. 2024 Apr 18:S1556-0864(24)00169-2.Epub ahead of print.
PMID:38642841.

Abs of abs.
ペムブロリズマブ+化学療法とプラセボ+化学療法の第Ⅲ相試験におけるPD-L1(TPS)1%未満の未治療進行非小細胞肺癌のプール解析による長期アウトカムを報告する。今回の探索的プール解析には、EGFR/ALK陰性転移性非扁平上皮非小細胞肺癌を対象としたKEYNOTE-189試験および日本での延長試験、さらに扁平上皮肺癌対象のKEYNOTE-407試験および中国延長試験の個別データが含まれる。KEYNOTE-189試験ではペムブロリズマブまたはプラセボとペメトレキセド、シスプラチン/カルボプラチンが、KEYNOTE-407試験ではペムブロリズマブまたはプラセボとカルボプラチン、パクリタキセル/ナブパクリタキセルが投与された。TPSはPD-L1 IHC 22C3 pharmDxを用いて中央判定された。全体で442例の患者が本解析対象となった(ペムブロリズマブ+化学療法、n=255;化学療法、n=187)。追跡期間中央値は60.7(49.9-72.0)ヵ月であった。ペムブロリズマブ+化学療法は、化学療法に対して全生存期間(ハザード比0.64[0.51-0.79])および無増悪生存期間(ハザード比0.66[0.54-0.81])を改善した。5年生存率(95%CI)は12.5%(8.6%-17.3%)対9.3%(5.6%-14.1%)であった。グレード3~5の有害事象は、ペムブロリズマブ+化学療法群で59.1%、化学療法群で61.3%に見られた。TPSが1%未満の未治療患者の5年フォローアップを行い、ペムブロリズマブと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、臨床的に意味のある持続的な予後の改善が示された。これらの結果は、ペムブロリズマブ+化学療法がこの集団における標準治療であることを引き続き支持するものである。

感想
あくまでもサブ解析の扱いですが、TPS<1%集団に対する化学療法+免疫療法の最終回答になるかと思います。これまで何回もTPS陰性集団に対してICIを上乗せする意味があるかどうか議論されてきました。今回はnon-SqとSqを合わせて、TPSの観点から総合した結果となっています。データカットオフ時点で、ペムブロリズマブ+化学療法群では85.5%、プラセボ+化学療法群で89.3%が死亡しており全生存期間は十分成熟しています。OS中央値はそれぞれ18.3ヵ月と11.4ヵ月ハザード比0.64で、最終的に2つの曲線は近づきますが十分に開いており、上乗せ効果はあると言えます。5年生存率もそれぞれ12.5%、9.3%で、クロスオーバーはありますがそれでも同時併用が勝っています。サブグループ解析を見ると、肝転移あり、女性、非喫煙者では若干分が悪く、これらの点は最初から指摘されていたとおりです。ペムブロリズマブ35サイクルを完遂した患者についても情報があります。それを達成したのは27人(10.6%)で、現在17人が生存うち12人はその後の無治療でPDでもないとの事です。数字としては抗がん剤+免疫療法を行うと5%程度(12/255)が完治に近い状況に導けるということになります。従来これは0%であったわけで、隔世の感があります。
ただASCO2024でCheckMate-9LAの長期フォローアップの結果が発表され、PD-L1<1%未満で5年生存率が、化学療法群8%なのに対して化学療法2コース+ニボイピ併用療法群で22%(ハザード比0.63[0.49-0.83])かつ奏効持続が19%と(横比べはご法度なのは重々承知ですが)かなり良いので、毒性さえクリアできればこの選択もあるかも知れません。ちなみにPD-L1<1%未満のニボイピの5年生存率は19%、その時の化学療法は7%でした[Brahmer JR JCO2023 PMID:36223558]。これらの試験間の差は議論できませんが、PD-L1<1%にも何らかの免疫療法を上乗せした方がよいことだけは確実なようです。