Uncommon変異の初回治療はラゼルチニブ+アミバンタマブが標準となるか

Amivantamab Plus Lazertinib in AtypicalEGFR-Mutated Advanced Non-Small Cell Lung Cancer: Results From CHRYSALIS-2.

Tomasini P et al.
J Clin Oncol. 2026 Jan;44(1):54-65.
PMID:41325571

Abs of abs,
稀なEGFR遺伝子変異(S768I、L861Q、G719X)を有する進行非小細胞肺癌において、既存の治療法の有効性は限定的である。CHRYSALIS-2コホートCでは、マイナーEGFR遺伝子変異(G719X、S768I、L861Qなど)を有し、過去2ライン以下の治療歴を有する患者を登録した。患者は未治療であったり第1、2世代のEGFR-TKI治療歴を有していた。Ex20ins、19Del、L858Rの共存は除外した。治療として初回4週間は週1回1050mg(体重80kg以上は1400mg)のアミバンタマブ静注、その後は2週間に1回の静注に加え、1日1回240mgのラゼルチニブ経口投与を受けた。主要評価項目は主治医評価の奏効率である。2024年1月12日時点で、105人にアミバンタマブ-ラゼルチニブが投与された。遺伝子変異はG719X(56%)、L861X(26%)、S768I(23%)であった。全対象集団(追跡期間中央値:16.1ヶ月)における奏効率52%[42-62]であった。奏効持続期間中央値(mDoR)は14.1ヶ月[9.5-26.2]であった。無増悪生存期間中央値11.1ヶ月[7.8-17.8]; 全生存期間中央値は未達であった。有害事象は過去の研究と一致し、主にグレード1、2であった。未治療例における奏効率は57%[42-71]であった。mPFSは19.5ヶ月[11.2-NE]、mDoRは20.7ヶ月[9.9-NE]であった。単一または複合変異は奏効に大きな影響を与えなかった。P-loop変異、αC-helix圧縮変異、古典的様変異、T790M様変異を有する患者の奏効率は、それぞれ45%(n=38)、64%(n=14)、67%(n=3)であった。本試験から稀なEGFR遺伝子変異を有する進行非小細胞肺癌において、アミバンタマブ・ラゼルチニブは新たな毒性なく、臨床的に意義のある抗腫瘍活性を示した。

感想
3か月ほど前ラゼルチニブのuncommon変異に対する効果について、CHRYSALIS-2試験の論文を待って考えますと書きました。今回はそれを行います。本試験において注意すべき点は、TKI既治療例が含まれていることです。一般に治療成績が低下しやすく不利とされる既治療例においても、48%という高い奏効率を維持しており、ほとんどの症例で何らかの腫瘍縮小が得られている点は極めて重要です。このデータだけでも、この治療法が現時点で最善であると推察されます。
さらに特筆すべきは、未治療例におけるPFSの長さです。ラゼルチニブ単剤でのPFSが10.8ヵ月[Park S JTO2025 PMID:40350080]であるのに対し、本試験では19.5ヵ月と目を引きます。もちろん、これは主要評価項目ではなくサブ解析に近い位置づけであり、強固なエビデンスとは言いきれません。しかし、既存のuncommon変異に対する臨床試験の多くも、小規模であったりサブ解析であったりすることを踏まえれば、十分に説得力のある数字と言えます。
初回治療における19DelやL858Rといったcommon変異と、uncommon変異におけるアミバンタマブを上乗せすることによる効果の差を表にしました。奏効率そのものには大きな差はないものの、uncommon変異の方がPFSの上乗せ幅が大きく、アミバンタマブの追加効果はマイナー変異に対してより相対的に強く寄与している可能性が示唆されます。症例数の少なさから大規模なランダム化試験での決着は現実的ではありませんが、これらを総合的に判断すれば、保険償還の問題は別として、現時点の標準治療に格上げされるべき内容だと考えます。
現在のガイドラインでは、アファチニブが強い推奨(推奨度1)、オシメルチニブが弱い推奨(推奨度2)となっています。今後、オシメルチニブやアファチニブからラゼルチニブ+アミバンタマブへ繋ぐ治療シークエンスや、オシメルチニブ後の抗がん剤+アミバンタマブ併用などの検証も期待されますが、これらもあえて前向き試験を組むほどではないかもしれません。それよりも、初回治療を決めた上で、耐性機序に合わせた個別化医療を模索することが、目指すべき方向性と思います。その個別化には遺伝子情報が理想的ですが、臨床情報や奏効期間といった既存データに基づく振り分けを進めるのが現実的であると言えます。

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