Decoding the Clinical and Molecular Signatures of EGFR Common, Compound, and Uncommon Mutations in NSCLC: A Brief Report.
Tavernari D et al.
J Thorac Oncol. 2025 Apr;20(4):500-506.
PMID:39694414.
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EGFR遺伝子変異は、肺腺癌における重要な発癌ドライバーであり、アジア人、非喫煙者、女性に多く見られる。 19DelやL858Rのようなcommon変異はTKIに反応するが、uncommon変異や複合変異は治療反応性がさまざまである。 今回は、common、uncommon、compound EGFR遺伝子変異を有する患者の臨床的特徴と分子プロファイルを比較し、治療成績を評価した。肺腺癌19163例(うちEGFR遺伝子変異は5212例)のマルチコホートゲノムデータセットを解析し、変異をcommon、uncommon、compoundに分類し、背景因子、変異シグネチャー、腫瘍微小環境因子を評価し、特に喫煙の有無とKRAS変異とTP53変異の合併に注目した。治療成績は、TKI有効性の代替指標として治療期間を解析した。EGFR遺伝子変異症例の8.9%を占めるuncommon変異は、喫煙者において有意に頻度が高く、タバコ関連の変異シグネチャーと関連していた。 Uncommonでは、commonと比較して、EGFR増幅、KRAS、TP53変異の割合、TMBが高く、細胞周期活性に関連する転写プロファイルが明らかに異なっていた。TKIによる治療期間の中央値は、common変異を有する患者(10.9ヵ月)やcompound変異を有する患者(12.4ヵ月)よりも、uncommon変異を有する患者(4.1ヵ月)で明らかに短かった。今回の結果はEGFR変異クラスによって臨床的・分子的不均一性を強調するものである。特に喫煙やKRAS、TP53の共存変異との関連など、uncommon変異の独自の性質が目立っている。次世代シークエンシングを含む包括的な分子検査は、これらの変異を同定し、治療方針を決定する上で極めて重要である。このサブグループに関連するタバコ関連の分子シグネチャーと高いTMBを考慮すると、uncommon変異を有する患者における免疫療法の役割についてさらなる研究が求められる。
感想
短い報告ですがuncommonついての免疫療法、耐性研究の非常に重要な論文です。今回のグループ分けについて確認します。「common」は19delとL858Rの変異を指し、「uncommon」はcommonまたはT790M、ex20insを除いた腫瘍形成に関与するドライバー変異を指します。また、「compound」はcommonとuncommonの組み合わせ、またはuncommon同士の組み合わせを指します(Fig1A)。
喫煙に関連する変異シグネチャーについては、[Alexandrov LB Science 2016 PMID:27811275]や[Alexandrov LB Nature 2020 PMID:32025018]で詳しく説明されています。簡単に言うと、遺伝子変異は「点(個々の変異)」を指すのに対し、変異シグネチャーは「それらの点が集まってできた模様(全体的な変異の傾向)」を表します。この喫煙に関連する遺伝子変異(変異シグネチャー4)はuncommon症例に多く見られました(Fig1G)。当然ながら、喫煙者が多く存在しました。シグネチャー4ではC>A変異が最も多く(26.8%、補足Fig2A)、uncommonなS768IとG719CもC>A転座によって引き起こされています。また、TMBやKRAS変異、TP53変異もuncommonで多く観察されました(Fig2B,C)。さらに、VAF解析ではEGFRとKRASの同時変異の分布(補足Fig3b,c)が、KRAS変異がない場合と同様の分布を示しており、これは別々のクローンでなく同じサブクローンで発生していることを示唆しています。つまり、EGFRとKRASの変異は、uncommonにおいて両者ともドライバーとして機能している可能性があります。このように、uncommonの詳細な腫瘍プロファイルを考慮すると、非喫煙者を中心としたcommon変異とは異なり、免疫療法に有利な特性が多く見られることから、この治療の研究を進める必要があることがわかります。