Uncommon mutationに対するオシメルチニブ

Osimertinib for Patients With Non-Small-Cell Lung Cancer Harboring Uncommon EGFR Mutations: A Multicenter, Open-Label, Phase II Trial (KCSG-LU15-09).

Cho JH et al.
J Clin Oncol. 2019 Dec 11[Epub ahead of print]
PMID:31825714

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性肺癌の約10%がuncommon mutationである。今回はこれらのuncommon mutationに対するオシメルチニブの効果と安全性を評価した。多施設単群オープンラベル試験の第Ⅱ相試験を行った。対象は組織学的に証明された転移性あるいは再発非小細胞肺癌で、Del19、L858RおよびT790M以外のEGFR遺伝子変異を持つ患者とした。なおエクソン20挿入変異を適格とした(注:結局組み入れられたのは1例)。プライマリーエンドポイントは奏効率で、副次項目として無増悪生存期間、奏効持続期間と安全性を評価した。2016-2017年で37人が登録された。同意撤回の1名を除き治療が開始された。年齢中央値は60歳、61%が男性であった。また61%が初回治療としてオシメルチニブを投与されていた。変異別では、G719X(19例;53%)、L861Q(9例;25%)、 S768I(8例;22%)、その他(4例;11%)となった。奏効率は50%、無増悪生存期間中央値は8.2ヶ月[5.9-10.5]、全生存期間は未到達であった。奏効期間中央値は11.2ヶ月であった。有害事象は全グレードの皮疹が31%、掻痒感が25%、食欲低下が25%、下痢が22%、呼吸困難感が22%であったが対処可能であった。今回の試験から、オシメルチニブはuncommon mutationに対して反応良好で毒性も対処可能であることが示された。

感想
uncommon mutationはこれまで第1,2世代のEGFR-TKIでの効果が議論されてきました。Del19、L858Rといったcommon mutationに比べ、奏効率、PFSともに悪いが少しは効く、第一世代より第二世代のアファチニブの方が良い、同じuncommonの中でもG719Xが少しましで、Ex20insertionは全く効かないというのがこれまでのコンセンサスです。ガイドラインでの扱いは現在のところ「EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ,アファチニブ)による治療を行うよう提案する(推奨の強さ:2)」となっています。Uncommonに対するオシメルチニブでの前向き試験は今回が初めてで、G719Xの奏効率が53%(PFS8.2ヶ月)、L861Qが78%(15.2ヶ月)、S768Iが38%(12.3ヶ月)でした。どれも症例数が少なく、また共存する変異もあるので何とも言えませんが、アファチニブでの報告[Yang JC LancetOncol2015 PMID:26051236]では、G719Xの奏効率が77.8%(13.8ヶ月)、L861Qが56.3%(8.2ヶ月)、S768Iが100%(14.7ヶ月)でした。ひょっとすると、uncommonではアファチニブに分があるのかも知れません。先ごろのFLAURA試験ではCommon mutationでの全生存期間が38.6ヶ月と報じられました。まだまだ未成熟データではありますが、今回の12ヶ月生存率86%(FLAURAでのオシメルチニブで89%)、18ヶ月生存56%と良好なことが期待されます。Waterfall-plotではL861Qでの縮小例が目立つような気もしますが、最も縮小したのはG719X+S768Iで、Ex20insはわずかな縮小を認めたのみでした。
さて日本での保険適応のことを考えた場合、まずオシメルチニブを使い、アファチニブまたはプラチナベースの治療を行うということになるでしょうか。免疫療法も効果がありそうという報告もあり、common mutationとは似ているけれども少し違った違った戦略を考えるのが適切なようです。