Uncommon Mutationに対する実地でのオシメルチニブ

Real-world outcomes of atypical EGFR-mutated metastatic non-small cell lung cancer (mNSCLC)treated with osimertinib (osi) vs. Afatinib or erlotinib.

Barsouk A et al.
Lung Cancer. 2024 Epub 2024 Aug 10.
PMID:39137595.

Abs of abs
L861Q、G719X、S768I、exon20などの非典型的EGFR遺伝子変異に対して、オシメルチニブと前世代TKIの有効性を比較したデータは限られている。今回は2007年から2023年までに初回治療のTKIを投与されたEGFR遺伝子変異陽性患者の臨床背景、治療歴、毒性、臨床転帰を電子カルテから抽出し、オシメルチニブ、アファチニブ、エルロチニブによる治療毎に比較した。無増悪生存期間中央値と全生存期間中央値は、Kaplan-Meierログランク解析とCox多変量回帰を用いて比較した。 EGFR遺伝子変異陽性患者355人のうち、36人(10%)がG719X(N=21; 6%)、エクソン20(N=11; 3%)、L861Q(N=7; 2%)、S768I(N=4; 1%)、C797S(N=1; 0.3%)の非典型的変異を有し、6人が複合変異を有していた。 古典的変異と非典型患者では、ベースラインおよびTKIの使用率は同等であった(p=0.124)。 非典型患者において、オシメルチニブはPFSが22ヵ月あり、アファチニブ(12ヵ月; p=0.005)またはエルロチニブ(9ヵ月; p=0.001)より優れていた。OSも同様にオシメルチニブは32ヵ月あり、アファチニブ(21ヵ月; p= 0.032)、エルロチニブ(17ヵ月; p=0.011)より優れていた。 有害事象による減量率は、アファチニブ(24%;p=0.003)またはエルロチニブ(23%;p=0.002)に対し、オシメルチニブ(19%)で低かった。 有害事象による投与中止率は、アファチニブ(1%対2%、p<0.001)またはエルロチニブ(2%、p=0.004)に対してオシメルチニブで低かった。今回の大規模リアルワールド解析において、オシメルチニブは非典型EGFR遺伝子変異陽性例に対して、アファチニブまたはエルロチニブと比較して、優れた無増悪生存期間および全生存期間を示し、忍容性も改善していた。

感想
いわゆるuncommon mutationの治療にはデータが乏しく、第Ⅲ相比較試験は難しい状況にあります。EGFR遺伝子変異陽性のサブグループ解析として、あるいは第Ⅱ相などで推し量るしかありません。一般的にはTKIを使用するものの効果は落ちるというのが定説です。肺癌学会ガイドライン2023を見るとエビデンスレベルC、TKI治療を行うことを弱く推奨と実地で必ず使う割には推奨度が低くなっています。オシメルチニブがいいのかアファチニブが良いのかはかなり議論されていますが、決定打はありません。
今回の論文の中心はFig2ですが、これを見ると若干PFS、OSともオシメルチニブが良くなっています。しかしFLAURA試験のサブ解析、特に19DelとL858RのOSではだいぶ違って見え、さらに効果の劣るこれらの変異でこの症例数では差が見えない方が、むしろ自然ではないかと思います。過去には韓国で行われたKCSG-LU15-09試験[Cho JH JCO2020 PMID:31825714]では,オシメルチニブでのPFS=8.2カ月、日本でのUNICORN試験[Okuma Y JAMAoncol2024 PMID:37991747]でもPFS=9.4ヵ月と極端に良いわけではありませんでした。とは言え現時点ではT790Mが出ない限り、オシメルチニブを後で使えません。そのような状況を考えると非典型的・minor・uncommonといわれるEGFR遺伝子変異についてはオシメルチニブ→アファチニブ、殺細胞性抗がん剤も十分に使用するように考えていくしかありません。