オシメルチニブの肺毒性、日本人は特に多い

Osimertinib versus Standard of Care EGFR TKI as First-Line Treatment in Patients with EGFRm Advanced NSCLC: FLAURA Asian Subset.

Cho BC et al.
J Thorac Oncol. 2018 Sep 18. [Epub ahead of print]
PMID:30240852

Abs of abs.
FLAURA試験(NCT02296125)は未治療のEGFR遺伝子変異陽性(Ex19del/L858R)患者においてチロシンキナーゼ標準治療(SOC)とオシメルチニブとを比較した第Ⅲ相試験である。今回はこの試験に参加したアジア人サブセットにおける有効性および安全性データを解析した。18歳以上(日本では20歳以上)で、未治療EGFR遺伝子変異陽性進行非小細胞肺癌を有するアジア人患者(アジア地域で登録)を、1:1で無作為化しオシメルチニブ(80mg、1日1回経口投与) SoC EGFR-TKI(ゲフィチニブ250mg、またはエルロチニブ150mg、1日1回)に割り付けた。プライマリーエンドポイントは、主治医評価の無増悪生存期間(PFS)であった。副次項目として、全生存期間、奏効率、中枢神経系への有効性および安全性であった。オシメルチニブ群とSoC EGFR TKI群の無増悪生存期間中央値は16.5ヶ月対11.0ヶ月であった(ハザード比0.54[0.41-0.72]、p<0.0001)。全生存についてのデータはimmature(maturity24%)であった。奏効率は、オシメルチニブで80%、SoC EGFR-TKIで75%であった。中枢神経系PFS中央値は、オシメルチニブ群では未達であり、SoC EGFR-TKI群では13.8カ月(ハザード比0.55,[0.25-1.17]、p=0.118)であった。SoC EGFR-TKIに対してオシメルチニブはグレード3以上の有害事象が少なく(40%対 48%)、治療中止に至る有害事象の発生率も少なかった(15%対 21%)。アジア人においても、FLAURA試験全体の安全性プロファイルと一致してオシメルチニブがSoC EGFR-TKIよりも臨床的に有意なPFS改善を示した。

感想
すべてのグレードで頻度が高かったものを挙げると、皮疹はオシメルチニブが58%対SoCが81%、爪囲炎は41%対38%、肝機能障害が12%対36%、肺臓炎が6%(9人)対2%でした。肺臓炎に関してFLAURA全体では4%対2%であり、概ねアジア人ではオシメルチニブの肺臓炎のリスクが高いことが見て取れます。FLAURA試験では、日本人サブセットの報告もなされています[Ohe Y JJCO 2018 PMID:30508196]。その結果の要約は以下の通りです;日本人で120人がランダム化されオシメルチニブ65人とゲフィチニブ55人に割り付けられた。無増悪生存期間中央値は19.1ヶ月[12.6-23.5]対13.8ヶ月[8.3-16.6](ハザード比0.61[0.38-0.99])。両治療群とも全生存期間中央値未達、有害事象の発生率は、2群で同等であった。特に2群のグレード3以上の間質性肺炎の頻度は同じ(各1例)であり、新たな安全性への懸念はなかった(要約ここまで)。しかしこの中で軽度(G1-2)の肺臓炎も含めるとオシメルチニブ群では12.3%(8人)、ゲフィチニブ群では1.8%と明らかにオシメルチニブの発症率が高くなっていました。つまりオシメルチニブの肺臓炎はほとんど日本人であることは注目すべき事象かと思います。ただ日本人でオシメルチニブによって肺臓炎になった症例はステロイド治療例もありますが、全例回復しています。中には後に他のEGFR-TKIで治療されたものがありますが、その転帰についての情報はありません。EGFR遺伝子変異陽性例に対しては初回治療としてオシメルチニブを選択する医師がほとんどで、私もその一人ですが、肺臓炎によって中止した場合にスイッチする治療選択は意外に大きなクリニカルクエスチョンになりそうです。またタグリッソの肺臓炎のリスク因子が、ゲフィチニブのそれと異なるのかどうかも私の大きな関心事です。後ろ向きにたくさん症例を集められる研究グループから今後報告されることを期待したいと思います。