オシメルチニブのbeyond-PD投与

The efficacy of continuing osimertinib with platinum pemetrexed chemotherapy upon progression in patients with metastatic non-small cell lung cancer harboring sensitizing EGFR mutations.

Patil T et al.
Lung Cancer.2024 Nov 25;199: Epub ahead of print.
PMID:39615411.

Abs of abs,
オシメルチニブで進行したEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対して、オシメルチニブを継続しつつ、次治療のプラチナ製剤+ペメトレキセドを行うことの臨床的有用性はまだ不明である。今回は国際多施設共同後ろ向きコホート研究を行った。2013年から2023年までにオシメルチニブで病勢進行し、進行時にプラチナ製剤ペメトレキセド療法を受けた159人を対象とした。 データカットオフは2023年12月31日とした。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)とし、カプランマイヤー法で解析した。 背景因子およびがん特異的因子を調整した多変量Cox回帰を行った。 まずオシメルチニブで進行した患者421例があげられ、そのうち組み入れ基準を満たした159例を2群に分けた: コホート1(オシメルチニブ+プラチナ製剤)は50例(年齢中央値59[30~83]歳、女性36[72.0%]、アジア人11[22.4%])、コホート2(プラチナ製剤単独)は109例(54[25~80]歳、女性62[56.9%]、アジア人74[64.9%])であった。 ほとんどの患者は喫煙歴がなかった(コホート1、37例[74.0%];コホート2、66例[60.6%])。 患者の3分の1はベースライン時に脳転移を有していた(コホート1、19例[38.0%];コホート2、36例[38.3%])。 両コホートとも抗癌剤による前治療歴は中央値で2ラインであった。 プラチナ製剤+ペメトレキセドによる次治療にベバシズマブまたは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)を追加した症例はコホート2で多かった(ベバシズマブ使用、30.3% vs 8.0%, p=0.002; ICI使用、33.0% vs 2.0%, p=0.001)。 追跡期間中央値30ヵ月で、オシメルチニブを継続投与し、次治療として白金製剤ペメトレキセドによる化学療法を行った場合(9.0ヵ月対4.5ヵ月、ハザード比0.49、[0.32-0.74]、p= 0.0032)、有意なPFS延長が認められ、初回治療がオシメルチニブのサブセット解析(n=55、11.0ヵ月対6.2ヵ月、ハザード比0.41、95%CI 0.25〜0.73、p= 0.002)でも認められた。 オシメルチニブで進行した後、脳転移のない患者において、オシメルチニブを継続することで、CNS進行までの期間が有意に短縮されることがわかった(n=38; 7.0 vs 4.1ヶ月; ハザード比0.47[0.48 – 0.98], p=0.01)。 調整後解析では、コホート1と2の間でOSに有意差は認められなかった(19ヵ月 vs 13ヵ月;ハザード比0.92[0.60-1.39]、p=0.68)。 本研究によりオシメルチニブで進行した患者において、オシメルチニブを継続し、次治療のプラチナ製剤+ペメトレキセドによる化学療法を行うことは、OSではなくPFSに有意な利益があるようだ。この治療は、中枢神経系の進行リスクを減少させるようである。

感想
ドライバー変異を有する患者に該当する分子標的治療を、その効力がなくなった後も継続投与すべきかどうかは長年議論されています。EGFR遺伝子変異陽性例については、その昔IMPRESS試験として、ゲフィチニブPD後に、CDDP+PEMをやる際にゲフィチニブをbeyonod-PD継続/中止のランダム化試験が行われました[Sonia JC LancetOncol2015 PMID:26159065]。結果はPFS利益が証明できなかったとしてnegetiveに終わっています。その後オリゴメタの話もありましたが、決定打がなく現在に至ります。しかし耐性機序がEGFR遺伝子そのものに関するものか、それ以外の変化なのかによっても分ける必要もありそうですし、すべてのクローンが耐性化したのかどうか定量化することも難しくケースバイケースの対応をされていると思います。その中でオシメルチニブ耐性後を対象としたMARIPOSA-2試験では、抗がん剤+アミバンタマブ vs 抗がん剤+アミバンタマブ+ラザルチニブで、PFSにあまり差がついていませんでした。つまり耐性機序を考慮せず盲目的なオシメルチニブbeyond-PD投与は、集団としての効果に乏しそうということになります。
今回は後ろ向きなのでバイアスが多くかかっています。特にオシメルチニブ非併用のグループではICIや血管新生阻害薬の併用が多く、それよりも「臨床家の勘」で、TKIのbeyond-PD投与が適切、と判断された症例では、PFSが良かったということになります。AIではなくhuman intelligenceというわけですが、これはこれで意味ある結論と感じます。そして真実か偶然かの議論のある、FLAURA-2[Planchard D NEJM2023 PMID:37937763]で出た併用療法の脳転移への効果[Jänne PA JCO2023 PMID:38042525]ですが、今回も数字としては確認されています。このデータは少し懐疑的に見ていましたが、やはり真実なのでしょうか?これもプラスに評価されるべき側面です。
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