ナブパクリタキセルの非劣勢試験: J-AXEL

Phase 3 Trial Comparing Nanoparticle Albumin-Bound Paclitaxel With Docetaxel for Previously Treated Advanced NSCLC.

Yoneshima Y et al,
J Thorac Oncol. 2021 Apr 27:S1556-0864(21)02107-9.
PMID:33915251.

Abs of abs
前治療歴のある進行NSCLC患者に対するアルブミン結合パクリタキセルの有効性と安全性を評価することを目的とした。今回の無作為化非盲検非劣性第3相試験では、殺細胞性抗がん剤による治療歴のある患者を登録し、ドセタキセル(60mg/m2)を投与する群と、ナブパクリタキセル(100mg/m2)を21日サイクルの第1日目、第8日目、第15日目に投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は全生存期間で、intention-to-treat方式で解析した。2015年から2018年に、503名の患者が無作為に割り付けられた。生存期間中央値は、ナブパクリタキセル群で16.2カ月[14.4~19.0]、ドセタキセル群で13.6カ月(95%CI:10.9~16.5)であった(ハザード比0.85[0.68~1.07])。無増悪生存期間は、ナブパクリタキセル群の4.2カ月[3.9-5.0]に対し、ドセタキセル群は3.4カ月[2.9-4.1]であった(ハザード比0.767[0.63-0.92]、p=0.0042)。奏効率は、ナブパクリタキセル群が29.9%、ドセタキセル群が15.4%であった(p=0.0002)。グレード3以上の有害事象は、発熱性好中球減少症(ナブパクリタキセル群245例中5例(2%)、ドセタキセル群249例中55例(22%))、末梢神経障害(それぞれ24例(10%)、2例(1%))であった。本臨床試験においてナブパクリタキセルは、全生存期間においてドセタキセルに劣ることはなかった。既治療の非小細胞肺癌では標準治療のオプションとして本レジメンを検討するべきであると思われる。

感想
再治療例におけるドセタキセルはニボルマブに負けるまで長く優先度の高い状態を保っていました。古くはTAX320[Fossella FV JCO2000 PMID: 10856094]があり、その後標準治療として確立しコントロール群と設定され、ペメトレキセド、エスワンの非劣勢が示されています。今回毒性軽減による利点のあるナブパクリタキセルとの非劣勢が示されました。対象はパクリタキセルやドセタキセル投与歴のない症例です。非劣勢試験は、試験群の95%区間の上限(平たく言えば統計学的に普通にあり得る最悪の値)が設定マージン以下に収まることで「劣ってはいない」と結論されます。今回のハザード比=0.85[0.68~1.07]は上限が1.25以下で見事に劣っていないことが証明されています。さらに優越性の検定を行いましたが当然これは証明されませんでした。生存曲線を見ると全生存期間は一貫してドセタキセルの上を行っており試験の意義があったと思います。サブグループ解析では特に扁平上皮癌で有効性が高そうとされています。唯一の欠点は末梢神経障害ですが、一括してパクリタキセルを投与していた時代に比べればかなりましです。現在プラチナ+パクリタキセル+ペムブロリズマブが初回治療の標準であることから、わざわざタキサン系を2次治療以降に取っておくことは少なくなっています。今後思ったほどこのエビデンスが生きる機会は少ないのかもしれません。ちょうど今週ナブパクリタキセルの供給が一時ストップすることが報道されました。非常に使用頻度の高い薬なので残念ですが、しばらくパクリタキセルで代用でしょうか。