ニボルマブ+抗がん剤による術前治療

Neoadjuvant chemotherapy and nivolumab in resectable non-small-cell lung cancer (NADIM): an open-label, multicentre, single-arm, phase 2 trial

Provencio M et al.
Lancet Oncol 2020 Sep 24;S1470-2045(20)30453-8
PMID: 32979984

Abs of abs.
非小細胞肺癌(NSCLC)において、局所進行期の患者のほとんどが困難な状況にある。今回は切除可能なⅢA期NSCLCに対する術前化学免疫療法の抗腫瘍活性と安全性を評価することを目的とした。試験はスペインの18の病院で行われオープンラベル多施設共同、単アームの第Ⅱ相試験である。対象患者は18歳以上で、組織学的または細胞学的に治療歴のあるⅢA期NSCLCで、多職種により局所的に外科的切除が可能であると判断され、PS0、1である患者であった。外科的切除前にパクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC6)+ニボルマブ(360mg)を3週間毎3コース投与された。手術後、ニボルマブ単剤(240mg/2週間毎4ヵ月、480mg/4週間毎8ヵ月間)の投与を行った。プライマリーエンドポイントは24ヵ月時点での無増悪生存で、すべてのネオアジュバント療法を受けた患者を含む治療群と、プロトコール規定により手術を受けた後、少なくとも1サイクルの術後補助化学療法を受けた患者を含む集団で評価した。安全性は前者の集団で評価された。2017年4月-2018年8月に、51人の患者をスクリーニングし、46人の患者が登録され、ネオアジュバント療法を受けた。データカットオフ時における追跡期間中央値は24.0ヶ月で、手術を受けた41人中35人が無増悪を保っていた。24ヶ月時点での無増悪生存率は77.1%[59.9-87.7]であった。46人中43人(93%)がネオアジュバント療法関連の有害事象を経験し、うち14人(30%)がグレード3以上であった。いずれの有害事象も手術遅延や死亡とは関連していなかった。グレード3以上の有害事象で最も多かったのは、リパーゼ増加(3例)と発熱性好中球減少症(3例)であった。今回の結果は、切除可能なⅢA期NSCLC患者において、ネオアジュバント療法としてプラチナベースの化学療法にニボルマブを追加することを支持する。ネオアジュバント化学免疫療法は、局所進行性肺癌に対する致死的疾患としての認識を治癒可能疾患へと変える可能性がある。

感想
ネオアジュバント治療は2018年に報告されたニボルマブ単剤による術前治療の印象が強いです。当時より手術後検体で腫瘍の完全消失は予後がよいこと、合併症が少なく手術は遅れないことが報告されています(過去記事)[Forde PM NEJM2018 PMID:29658848] 。今回の試験はphaseⅡで、効果と安全性を見ることが主な目的ですが、プライマリーエンドポイントを2年無増悪生存率においています。帰無仮説を40%とし55%を仮定しています。結果は77.1%[59.9-87.7]なので、今回の試験はpositiveとなります。しかし関心は免疫療法により手術の合併症が増えないか、有害事象により手術が遅れが出ないかにあります。これは本文のハイライトである”Reseach in content”で述べられているとおりで、この懸念は当たりませんでした。全体として良好であることが確認された上で気になるのは腫瘍のPD-L1発現により効果が違うのかということです。明確なデータは示されていませんが、PD-L1発現とPFSやOSの間に明らかな差は見られなかったと本文にあります。ただTPSとmajor pathological responseとの関係は存在し、TPS>=25%では感度65%、特異度100%であったとのことです。つまりTPSが高くないと病理学的な奏効は得られにくいと言えそうです。しかしTPSが高いことは予後不良と言われていますので、乳癌におけるHER2と同じで免疫治療後の手術に関して、逆に予後因子までなるかどうかは今後の課題です。
さて少し前にCBDCA+Nab-PTX+アテゾリズマブのネオアジュバントの試験が報告されています[Shu CA LancetOncol2020 PMID:32386568] 。この試験では手術の遅れはなかったものの、術後肺炎による呼吸不全で一例死亡が出ています。蛇足ですが、この2つの試験は背景も違い、術後の免疫療法の有無の違いもあり生存データの比較は不適切です。
この試験も含め今後は、リンパ節転移のある症例は殺細胞性抗がん剤+免疫療法のネオアジュバント療法と術後免疫療法の流れは確実と思います。特に免疫療法はがん悪液質になってからでは分が悪いので、今後は再発するまでに主な治療をやり尽くしているという状態になってくると思います。現在私たちが治療している術後再発の患者さんは、近未来では緩和ケア医の担当になっているかも知れません。