小細胞肺癌に対するニボルマブ+イピリムマブ、効果は限定的

Nivolumab and Ipilimumab as Maintenance Therapy in Extensive-Disease Small-Cell Lung Cancer: CheckMate 451.

Owonikoko TK et al.
J Clin Oncol. 2021 Mar 8:Epub ahead of print.
PMID:33683919.

Abs of abs.
進展型小細胞肺癌(ED-SCLC)では、プラチナ製剤を用いた一次化学療法に対する奏効率は高いが、持続性に欠く。CheckMate451は、ED-SCLCの初回化学療法後の維持療法として、ニボルマブとイピリムマブの併用療法とニボルマブ単剤療法を評価した第Ⅲ相試験である。
ED-SCLC、PS0-1、初回化学療法4サイクルまでの治療後無増悪の患者を、①ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを1回/3週 12週間投与→ニボルマブ240mgを1回/2wで継続、②ニボルマブ240mgを1回/2w、③プラセボ、に無作為に割り付け(1:1:1)、2年間または増悪もしくは許容できない毒性が出るまで投与した。プライマリーエンドポイントは,プラセボに対するニボルマブ+イピリムマブの全生存期間とした.副次評価項目は段階的に検証した。
全体で834名の患者が無作為に割り付けられた。最短追跡期間は8.9カ月であった。全生存期間において、ニボルマブとイピリムマブの併用療法はプラセボに対して有意な延長は見られなかった(ハザード比0.92[0.75-1.12]、P=0.37、9.2 vs 9.6ヵ月)。ニボルマブとプラセボのはハザード比0.84[0.69-1.02]で、ニボルマブの全生存期間の中央値は10.4カ月であった。プラセボに対する無増悪生存期間のハザード比は,ニボルマブ+イピリムマブで 0.72[0.60-0.87],ニボルマブで 0.67[0.56-0.81]であった.腫瘍の変異数が13個/Mbp以上の患者では、ニボルマブとイピリムマブの併用で全生存期間が向上する傾向が認められた。グレード3,4の有害事象は、ニボルマブ+イピリムマブ(52.2%)、ニボルマブ(11.5%)、プラセボ(8.4%)であった。
本試験において初回化学療法で進行がないED-SCLCにおいて、ニボルマブ+イピリムマブによる維持療法は全生存期間を延長しなかった。新たな安全性情報はなかった。

感想
もともとは2019年に発表されたデータでようやく論文化されました。このようにnegative studyは埋もれやすいのですが、その後小細胞肺癌に対する免疫療法の成否を見ているときわめて妥当な結果であったことが伺えます。直接ではなくともなんらかの考えるヒントが得られることが多いので成功例と同じスピードで論文化をお願いしたいです。
プライマリーエンドポイントであるニボルマブ+イピリムマブの対プラセボ比較では、1年生存率が40.9%対40.3%とほぼ同じですが、6ヶ月PFSでは20.3%対10.4%と倍の開きがあり、利益を受ける集団は存在しそうです。探索的項目になりますが、ニボルマブ単剤とプラセボの比較の方が良好な成績で、この6ヶ月PFSは21.1%対10.4%でした。おそらく免疫療法の恩恵を受けるためにはニボルマブ単剤で十分ではないかと推察されます。
サブグループ解析では、65歳以下、PCIあり、肝転移なしでニボルマブ+イピリムマブが良好に寄っているように見えます。この傾向はニボルマブ単剤対プラセボのサブグループ解析でも見られます。つまり従来言われていたように、高齢者には効きにくく、肝転移にも効きにくいことが再現されています。TMBとCPS(TPSの代替で、PD-L1陽性細胞(腫瘍細胞、リンパ球、マクロファージ)の総数を、腫瘍細胞の総数で割ったもの(%なので100倍したもの)と定義するようです)で分けたFig3では、ニボルマブ+イピリムマブとニボルマブ単剤はほぼ重なっており、TMB13個/Mbp以上とCPS<1%で差がつく傾向にありました。CPS(TPS)陽性が必ずしも有利に働かないのは、他の試験でも見られており確実でしょう。どうやら小細胞肺癌に対してCTLA-4阻害薬は望み薄で、わずかにPD-(L)1阻害薬で利益を得られる集団が存在するというのが実情のようです。