悪性胸膜中皮腫に対する新たな治療選択

Gemcitabine with or without ramucirumab as second-line treatment for malignant pleural mesothelioma (RAMES): a randomised, double-blind, placebo-controlled, phase 2 trial

Pinto C et al.
Lancet Oncol.September 06, 2021
PMID:未掲載

Abs of abs.
中皮腫における血管新生阻害には前臨床段階での根拠がある。今回は既治療の悪性胸膜中皮腫患者を対象に、抗VEGFR-2抗体であるラムシルマブとゲムシタビンを併用することの有効性と安全性を評価した。RAMES試験は、イタリアの26の病院で実施された多施設共同無作為二重盲検プラセボ対照第2相試験である。対象は18歳以上、PS0-2、ペメトレキセドとプラチナ製剤による1次治療中または治療後に進行した悪性胸膜中皮腫である。ゲムシタビン1000mg/m2を3週間ごとに第1、8日目に投与し、さらにプラセボを3週間ごとに第1日目に投与する群(ゲムシタビン+プラセボ群)またはラムシルマブ10mg/kgを3週間ごとに静注する群(ゲムシタビン+ラムシルマブ群)に無作為に割り付けられ、腫瘍の進行または許容できない毒性が認められるまで継続した。中央での無作為化は、PS、年齢、組織型、初回治療から進行までの期間を層別化因子として最小化アルゴリズムに従って行われた。主要評価項目は全生存期間である。有効性解析は、正しく無作為化され、割り当てられた治療を受けたすべての患者を対象とし、安全性解析は、少なくとも1回受けたすべての患者を対象とした。165人が登録され161人が正しく割り付けられゲムシタビン+プラセボ(n=81)またはゲムシタビン+ラムシルマブ(n=80)のいずれかを受けた。データベースロック(2020年3月8日)において、追跡期間中央値21.9カ月で、ラムシルマブ群の方が全生存期間が長かった(ハザード比0.71[70%CI:0.59-0.85、p=0.028])。全生存期間の中央値は,ゲムシタビン+ラムシルマブ群で 13.8 ヵ月[70%CI 12-7-14-4]、ゲムシタビン+プラセボ群で 7.5 ヵ月[6.9-8.9]であった.グレード3、4の治療関連有害事象は、ゲムシタビン+ラムシルマブ投与群で80名中35名(44%)、ゲムシタビン+プラセボ投与群で81名中24名(30%)に見られた。最も多かったのは、好中球減少症(ゲムシタビン+ラムシルマブ群で16例(20%)、ゲムシタビン+プラセボ群で10例(12%))と高血圧(5例(6%)、なし)であった。治療関連の重篤な有害事象は、ゲムシタビン+ラムシルマブ群で5例(6%)、ゲムシタビン+プラセボ群で4例(5%)に報告された。最も多かったのは血栓塞栓症で、ゲムシタビン+ラムシルマブ群で3名(4%)、ゲムシタビン+プラセボ群で2名(2%)であった。治療関連死はなかった。本研究からラムシルマブとゲムシタビンの併用療法は、標準化学療法の初回治療後の全生存期間を有意に改善し、安全性プロファイルも良好であった。この組み合わせは、新たな選択肢となり得る。

感想
CheckMate-743試験[Baas P LANCET2021 PMID:33485464]が出て以来、徐々に悪性胸膜中脾腫の初回治療はニボルマブ+イピリムマブに移行すると思われます。しかしまだシスプラチン+ペメトレキセドで開始した人もいる状況です。もともとさしたるドライバー変異もなく、治療薬がきわめて少ないところですので、有望な治療が出てくることに意義があります。現在シスプラチン+ペメトレキセドで開始した場合、2次治療としてはニボルマブ単剤が行われるケースが多いです。これは国内で行われたMERIT試験[Okada M ClinCancerRes2019 PMID:31164373]の結果を受けてのことですが、今後もしゲムシタビン+ラムシルマブがもし認められれば、「ニボイピ→シスペメ→ジェムラム?」の順になる可能性が高いと思われます。血管新生阻害薬のベバシズマブもシスプラチン+ペメトレキセドへの上乗せで改善が認められており、一度は使いたい薬であることは間違いありません。サブグループ解析を見ると、70歳より上の高齢者、PS=1-2で若干プラセボの方に振れており気になりますが、非上皮型でもラムシルマブ側に寄っており期待できます。これまで通り、血管新生阻害薬は高齢者やPS不良例ではあまり利益がないことが再現されているだけと思います。一方で血管新生阻害薬を入れている試験群でも奏効率はわずか6%!ですから、あまり目に見えた効果は実感できないかもしれません。統計設定が甘いとは言え、第Ⅱ相試験にも関わらず血管新生阻害薬の臨床試験で、主要評価項目に全生存期間を選んでいたことは慧眼と言わざるを得ません。